W Ⅰ-Ep1−Feather 6 ―The second part ―


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 アリィーシュはエリンシェに、「予言」について語る前に、関係があるそうで、テレスファイラと天界についても言及をした。


 もとより、天界の間でも、テレスファイラと神々は縁深いと伝えられて来たそうだ。そのためか、テレスファイラは邪神に狙われることが時折あったという。

 天界の中で、記憶に新しいものは、旧王国時代が邪神に襲われた事件だという。だが、当時を知る神がおらず、詳しいことは天界でもあまり分かっていないらしい。唯一分かっているのが、襲撃事件のきっかけに旧王国の姫が何らかの形で関わっているということだけだった。そのためか、襲撃事件が旧王国を滅亡に追い込んだ一つの要因だと噂されていた。

 噂の真否はともかく、テレスファイラの守護神にはできるだけ強い〝力〟を持つ神が選ばれることになったという。そこで、割合強い〝力〟を持つアリィーシュが選ばれたのだ。

 ……だが、それが逆に仇となってしまった事件が、後に起こってしまったのだ。ガイセルがエリンシェに語った、テレスファイラの守護神――アリィーシュと邪神の戦いになった、あの事件である。強大な【力】を持つ邪神は、テレスファイラと、強い〝力〟を持つアリィーシュの両方を狙ったそうだ。

 実は、あの事件の場にはもう一人、強大な【力】を持つ邪神を慕っていた、女性の邪神がいたのだと、当事者であるアリィーシュは語った。その女性の邪神が割って入る形になってしまったことで、戦いは三つ巴になり、激しくなったそうだ。

 結果、アリィーシュは苦渋の決断をすることになった。――邪神二人を、自らを含めて封印することにしたのだ。

 自分の力だけではどうすることもできず、アリィーシュはその決意を、天界を統べる神である大神おおがみに託すことにした。

 そして、すぐさま、アリィーシュの決意を聞き届け、その地に降り立った大神により、彼女と邪神二人は封印された。


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「――そもそも、どうして邪神は神様を狙うの?」

 アリィーシュの話の途中で、エリンシェはそんな疑問を口にする。

〝それはね、私達神々の「源」を【支配】すれば、力も――神自身も意のままにできると、邪神達の間で言われているからなの〟

「〝源〟って……?」

 エリンシェが首を傾げてみせると、アリィーシュは胸に当て、答えを口にする。

〝――「心」よ。 神々の力は「心」の強さが強ければ強いほど、力も強くなるの。 だから、負の「心」に囚われてしまうと、どんどん堕ちていってしまうの〟

 先程ガイセルが声を掛けたのは、神々のそういった性質を知っていて、エリンシェが考え込んで負の感情を抱かないようにするためだったんだろうか。そう考えると、エリンシェは辻褄が合うような気がした。

 ……だが、神々と同じように、エリンシェ自身も「心」によって左右されるものなのだろうか。後でアリィーシュに確認してみようと思いながら、エリンシェはひとまず話の続きを促した。

「……分かった、覚えておく。 ありがとう。 ――それで、その後はどうなったの?」

 

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 アリィーシュは話の続きを語った。


 封印により三人の神の戦いが幕を閉じようとした時、突如、予言の神がその場に降り立ち、とある予言を残していったという。


――戦いは一旦の終わりを告げた。

  だが、これで終焉ではない。


  いつの日か、ヒトの身でありながら、大いなる〝力〟をもつ者が誕生するであろう。


  それは、かつてこの地に生まれた「姫」よりもさらに強く、我らが御上にも匹敵するほどの〝力〟。


  その〝力〟をめぐり、さらなる戦いが幕を明けであろう。


 それが一つ目の予言。封印されながらも、アリィーシュもその予言を耳にしたという。

 予言の神が残した予言が外れることはほとんどない。一つ目の予言以来、大神とアリィーシュは、いつの日か必ず訪れる「その日」を警戒していたという。

 

 そして――、後にエリンシェが誕生した。


――大いなる〝力〟を持つ者、今この時より生まれ出づる。


  その〝力〟は繁栄と破壊をも、もたらすもの。


  いずれ、彼の者をめぐり、戦いの幕が開かれるであろう。




  繁栄をもたらす時、彼の者はいずれ、〝神〟に至り、天界オルヴェンジアとテレスファイラを結ぶであろう。


  ……破壊をもたらす時、この世は終焉を迎えるであろう。




  我らが御上よ、祝福を与え給え。


  彼の者に幸福があらんことを。


 これが二つ目の予言――エリンシェが誕生した際に授かった予言だ。それ以来、秘密裏に、大神はいつか起こるであろう戦いに備え、尽力しているそうだ。

 成長するにつれ、エリンシェの〝力〟は〝覚醒〟に近付いていくという。〝羽〟が生えたのもその一環だが、まだ完全な〝覚醒〟には至っていないのだと、アリィーシュはエリンシェに話すのだった。


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