第23話 復活の二人

ククク……、相変わらずの間抜けヅラを並べてやがる。嗚呼、あの過酷な修行の日々を思い出すぜ……。バッドロックの家の裏の滝に打たれ(何の意味があったのか解らんけど)、クソったれジジイの説教を聞き(ほとんど寝てたけど)、三日も断食をして(そのあと普段の10倍以上食ったけど)、自分の住処をメッチャ綺麗にして(気がついたらもとに戻ってたけど)……。


バァァァ――――――――――――ン!


「オレ様は強くなったッ!!!!!!!!」

「……」


フフフ……、鍛えられたオレ様の肉体に誰も言葉が出ないようだぜ。見た目には何も変わっていねーけどな! 内面がゼンゼン違うのだ。どうだ。ホレホレ。チラリ、とヴァイオラのヤツを見る。もう何も怖くね―ぞ!


「おかえり、バロック」

「た、ただいま……」


あ、あれ? なんか雰囲気が前に戻っているような……? っつーか、眼があのクッソおっかねーブラッディレッドじゃなく、昔の緑っぽい黒に戻ってるし……。ええと、その……。スッゴイ笑顔だな。あれ? 何? 何があったの……?


「……ジョゼとベルゼの身体を取り戻したよ。バロックのこと、待ってたんだ。一緒に復活させたいと思って」

「アレっ!? 優しい……? なんかこうオマエ、殺伐としてなかったっけ……?」


ヴァイオラがオレ様の前にゆっくりと歩み寄ってくる。


「うん。ゴメン、わたし……、焦ってたみたい。苦しいことがいっぱいあって、戦うと頭がスッキリしちゃって……、バロックのこと、あんまり大事にしてなかった。『宿主』失格だね」

「い、イヤ! そんな事ないぞ! あとはオレ様に任せておけ!」

「……ありがとう、バロック」


ギュッとヴァイオラに抱きしめられるオレ様。……身体が痺れる感覚に陥りながらも、オレ様はヴァイオラを抱きしめ返した……。


「…………オレ様、オマエの事を守りたい…………!」

「わたしもだよ」

「何……? 『第1の願い』が変質してより強固に……!? これは一体……!?」

「こらシグ、野暮なことは言わないんだよ。ね、エリザベート君」

「異種族間に生まれる、真実の愛……! なんて美しい……!」

「オイ、エリザベートちゃん、そーゆーんじゃねーからよ……」

「あれ? そうなの? ま、いいけど」

「イッ、イヤッ! そーじゃねーけど!」

「フフッ」


オレ様とヴァイオラがイチャコラしていると、水色ピンクポニテ『悪魔使いディアボリスタ』のアストリッドと、その使い魔レッドラムが中央司令室に入室してきた。レッドラムは相変わらず赤い風船みてーなツラして金魚のフンみてーにくっついている。


「お、バロックじゃんか。久しぶりだな」

「わー! バロック様ー! お久しゅうございますー!」

「茶番はそのくらいにして、さっさとジョゼとベルゼを復活させたらどうだ?」

「あー、そうだなヴァイオラ、その、回収してきたジョゼとベルゼの身体ってのをオレ様にも見せてくれよ」

「それが、わたしのココに吸い込まれちゃって……」


ヴァイオラは自分の胸の真ん中あたりをつんつんと突っついた。触れてみると確かに、例のおっかねえ『紅蓮の心臓』以外に、二つの異なる『アストリオン反応』が感じられる。


「ちょっと悪いが覗かせてもらうぜ。ムムム……、『黄金の結晶』と『漆黒の結晶』か。ふーん、超空間で木っ端微塵になった二人を、量子宇宙経由でZIPして回収してきたってワケか。量子宇宙といえば、ベアスの仕業だな。ベアスのヤツ、何か目的があるんだろ? タダじゃねーよな? 交換条件はなんだったんだ?」

「おぉ……、やっぱりバロックはそうじゃないとね! さっすが!」


ヴァイオラがなんか知らんけど感動している。


「一ヶ月半ぶりのオレ様の推理が冴え渡りすぎてしまったか……」

「んふふっ。ちゅっ! ちゅっ!」

「オ、オマ……、やめ……。す、吸われるぅぅぅ……」

「はあ、まったく……。ほらほらヴァイオラ、コイツ外から戻ってきたばっかだから雑菌まみれだよ。一回洗ってきたら?」

「いーの!」

「ハァ……、ハァ……、た、助けて……」


***


オレ様はぐったりした。アスタリスクを三つ入れて閑話休題するほどには……。そんなオレ様にお構いなく、アイツらはジョゼとベルゼを復活させるための準備を始めやがった。100m以上ある広いドーム状の実験デッキにはヴァイオラとシグ、オレ様だけがいて、他のメンツ(『悪魔』と『宿主』以外の全員)は外周のモニタリングルームから観察している。ま、何があるかワカンねーしな。


「じゃ、いくよ。『悪魔の設計図デモンズ・プラン』!」


ヴァイオラの周囲に『翠緑のアストリオン』がグオッ! と竜巻のように集い、掌の上に固まっていくと思った瞬間、パキィン! と高純度の球体となった。……速い! 


「この状態から『メダイユ』を嵌めず、わたしの中の『クリスタル』を外部に展開させれば――。『星紋顕現アストラ・リベレーション』!」


ギャンッ! 黄金と漆黒の光がヴァイオラから分離していく……! まるで中世の八つ裂きの刑みてーに両サイドに引っ張られ、ヴァイオラの額から血が滴る……! ヴァイオラは自身の『翠緑のアストリオン』で耐えているが……。


「ぐ、ぐぐ……!」

「大丈夫か!? ヴァイオラ!?」

「だい……じょぶ……!」

「――全く、見ておられぬわ。私が手を貸してやろう」


ドクン! 今度は『紅蓮の心臓』が鼓動し、ヴァイオラの瞳が真っ赤に染まる。ライグリフがヴァイオラの身体を繋ぎ止め、赤と緑、破壊と再生が入り混じった獰猛な『アストリオン』が周囲を包み込む。


ゴボボボボ……ッ!


「うわッ! 凄まじい圧力だ……! ふ、吹き飛ばされるッ!」

「またそれかよッ! だ、だけど今のオレ様なら耐えられられ――ッ! ぎゃー!」


ゴアッ! ゴッ! バキバキバキバキバキバキッ!! ゴロゴロ! ガン!


オレ様とシグは吹っ飛ばされ、広い実験用デッキの床はバッキバキにブッ壊れた。いてててて……。ヴァイオラの周りは、粉塵と化した床材がもうもうと漂って、白い煙に包まれている。金属やらなんやら混ざっているので、人間が吸ったら確実にヤベーヤツだ。ただちに排気装置が作動し、室内の空気を入れ替えていく。


「ど……どうなった!?」

「オイ見ろ! 人影が三つあるぜ……!」


だんだんと霧が晴れていくヴァイオラの両サイドに、瞼を閉じた、懐かしい顔が二つ……。『黄金の蔦』が絡まった長身ロングヘアのイタリア女。ああ、あの時。教会で最初に出逢った時みてーな、ライダースーツに身を包んでいる。そしてもう一人。『漆黒の触手』が揺らめいている、浅黒い肌の少女。ボロボロの服を纏い、背中に透明な羽根が生えている。オレ様は思わず声をかけた。


「ジョゼ、ベルゼ……!」


そのとき、パン! とベルゼの羽根が消え、ボテッと床に子豚が一匹落下して、「ブキー!」とブサイクな鳴き声を上げた。ベルゼに憑いていた『願いの悪魔』だ。『宿主』にしたベルゼを利用して地球ごと飲み込み、そのまま『王の儀式』に勝とうとしていたのだが、ジョゼが自爆技で超空間へ道連れにし、消滅したと思われていた。が、ベルゼに一部融合していたせいで、ついでに助かったらしい。


「……フライピッグ……。生きてたんか、オメー……」

「はっ!? こ、ここはッ!? ボクは一体……!?」

「いや、オメーなんかはどうでもいいんだよ! それより……、それより!」


ゆっくりと歩み寄っていったヴァイオラが、ジョゼをギュッと抱きしめながらこう言った。


「おかえり、ジョゼ」

「……ヴァイオラ……? それにバロック……。……私は……」

「ジョゼ―――――――っ!!!!」


オレ様もジョゼに飛びついてしがみついた。ジョゼは状況が把握できていないといった表情のまま、オレ様を引っ剥がしやがった。こ、こいつ……! ヴァイオラは静かに微笑むと、続いてベルゼの前に歩み寄って手を取り、声をかけた。


「遅くなってゴメンね。ジョゼの側にいてくれてありがとう……、ベルゼ」

「……!」


ベルゼのボサボサヘアーをよしよしと撫でるヴァイオラ。ベルゼは無垢な笑顔でそれを迎え入れ、にっこりと笑った。そして『第1の願い』で素朴なクッキーを一枚出すと、ヴァイオラにそれを渡した。


「へへっ」


一言、呟いたヴァイオラは……、そのまま気を失って、バタッとその場に倒れ込んだ。無理もねー。身体が引き千切れそうなほど強引に、魂そのものと言っても差し支えない『アストリオン』を三分割して、『悪魔』と融合した『宿主』を二人、再構築したのだから……。


「ヴァイオラ……」

「……」


その場にいた全員、言葉を発することなく、感謝と尊敬の念を一人の人間の少女に贈り、誰ともなく祈りを捧げた。オレ様、ジョゼ、ウォルコーン、シグ、ヘッジフォグ、ベルゼ……、オレ様たちの心がひとつになったのを感じる。フライピッグはソッポを向いているが、ベルゼにジロッと睨まれて縮こまっていた。ジョゼが血まみれのヴァイオラを抱えあげると、無言のまま、オレ様たちは実験デッキを後にした。シグがジョゼを救護室に案内し、二言三言、言葉を交わしながら去っていく。


「じゃ、ベルゼ。オレ様たちは応接室で待ってようぜ。こっちだよ」

「……うん。いこ、ぶーちゃん」

「ギャー! ボクのしっぽを掴んで引きずるなァァァ! ちぎれるぅー!」

「あーあ、オレ様がクールになった分、賑やかし担当が増えたぜ……」

「だ、誰が賑やかし担当だー! ボ、ボクだって一応……」


床をズルズルと引きずられる子豚ちゃんに、『漆黒のアストリオン』で真っ黒に染まった眼窩でゆっくりと振り向いたベルゼが、口から黒い霧を吐き出しながら一言。


「……いちおう、 な ぁ に ?」

「ピ、ピィイィ――――――――――――ッ!!!」


黒い霧から一滴垂れた雫が床に落ち、ジュワッ! と音を立てて、丸い穴を一つ作り上げた。待機していた研究員やら三神たちはこれを見て、そりゃもうドン引きよ。よしよし、心優しいオレ様がひとつ、場を諌めてやるとしよう。


「まあまあ、ベルゼ……。せっかくシャバに戻ったんだから、美味しいものでも食べたらいーぜ。エリザベートちゃん、なんかねーかな?」

「あ、ああ……! ケーニヒスクーヘンがありますよ。新年なので作りました。私、レーズン苦手なので抜いちゃいましたけど……」

「ああ、あのサクッフワーのやつか。ベルゼ、があるぜ!」

「……たべたい!」

「よっしゃ、行こうぜ行こうぜー!」


フ……、と黒い霧が空気に解けてなくなる。冷や汗をかいていた一同は、はぁ~~~とため息。三神のおっちゃんがオレ様にグッ、と親指を立てて高評価1いいね


「今のやりとり、ヴァイオラ君みたいだったよ」

「まぁ、な」


そのままオレ様と三神のおっちゃんを先頭にして、中央司令室の応接ブースへと向かう。ベルゼはエリザベートちゃんと、お菓子の話題で盛り上がっている。ヤレヤレ、落ち着いたようで何よりだぜ。オレ様と三神のおっちゃんは雑談しながら、歩いていく。


「オレ様、んだ。願いの悪魔が人間を『宿主』にするとき、その人間の一部位を『悪魔化』してヤドリギにするんだけど――」

「ああ。バロック君は居眠りしてて、気づいたらヴァイオラ君が『宿主』になってたんだっけ?」


オレ様はビロードのような手触りの頭部をポリポリと掻いた。


「――アイツ、寝てるオレ様のことを、ぬいぐるみか何かと勘違いして、うっかり触っちゃったんだ。オレ様の『魅了点チャームポイント』はこの『手触り』でさ。それで、モロに『魅了』を喰らって、アイツ頭がブッ飛んじゃってさ。結構な時間、オレ様の頭にかじりついてたらしい……。悪いことした。油断してたオレ様が悪いんだ。アイツをこの戦いに巻き込んだのは、オレ様だ」


三神のおっさんは、オレ様の懺悔を黙って聞いてくれた。


「……それで、バロック君がって?」

「アイツの『心』は空っぽだった。そこに、経口摂取されたオレ様の一部が入り込んじまった、ってわけ。知らん間に、悪魔のハートが出来上がり。オレ様のヤドリギは、そうして出来上がった、って事」

「なるほどね……。だから君にも、ヴァイオラ君の影響が出ているという事か。君のの一部分が、ヴァイオラ君の『心』そのものと、繋がったから」

「ケッ、そーゆーこったな」


中央司令室に繋がっている自動ドアを潜ると、4メートル四方くれーの身体チェック用フロアを経由して、すっかり見慣れた巨大モニタリングルームに到着した。ベルゼの手を引くエリザベートちゃん、まるで幼稚園児を引率する先生みてーだ。エージェントなんかよりよっぽど性に合ってるんじゃねーかな。


「お、そいつが悪魔フライピッグの『宿主』か……。こんにちは、お嬢ちゃん」

「えぇぇぇぇぇぇ―――――っ!? あ、あの『伝説の食いしん坊』こと、フライピッグ様がいらっしゃるんですか!? お会い出来て光栄ですッ!」


応接ブースのクッソ高そうな牛革張りのでっけーソファに腰掛けてるのはアストリッドとレッドラムだ。下悪魔に生まれたレッドラムは、ヒエラルキー最強ランクの『願いの悪魔』に憧れているらしく、オレ様たちの事にやたらめったら詳しい。急にヨイショされて子豚ちゃんがイキり始めた。


「お、おお……! キミはボクのファンなのかい!? コイツらときたらボク様をひどい扱いばっかりしやがって……、でも、う、嬉しいなぁ! やっと理解者が現れてくれて……」

「写真撮ってDevistagramに投稿してもいいですか!?」

「勿論だブ! はい、チーズ!」


パシャ!


「このくだり要らねーだろ」

「ま、いいんじゃない。レッドラムも嬉しそうだし。ベルゼちゃん、こっちおいで」


アストリッドがどこから取り出したのかコスメポーチを開くと、櫛を一本取り出して、ベルゼのボサボサ髪を丁寧に梳き始めた。ベルゼはアストリッドの足の間にちょこんと座り、お人形さんごっこ状態だ。


「ちょっと痛んでるけど、せっかく可愛いんだし、お手入れするといいよ」

「……♡」

「そ、そういえば! ケーキがあると聞いたブ! ど、どこだブー!?」

「はいはい、お持ちしましたよ」


エリザベートちゃんが皿に乗ったケーニヒスクーヘンをテーブルに置き、ナイフで切り分けてくれた。ちなみにケーニッヒクーヘンは別名、王様のお菓子と呼ばれ、1月6日の公現祭に出されるケーキだ。正式名称は地方によって形や作り方がゼンゼン違うのだが、エリザベートちゃんが焼いたものはドライフルーツ(レーズン以外)をふんだんに盛り込んだ、ゴリゴリのドイツ風パウンドケーキである。


「……おいしい……」

「そういえばベルゼの『第1の願い』は『食べ物を出す』願いなんだよね。一度食べたものなら再現できるんじゃない?」

「……うん……。『第1の願い』……」


黒い粒子がテーブル上に集まり、ケーニヒスクーヘンがそっくりそのまま、コピペしたみてーに、ポポポポポン! と床に10個も出現した。ベルゼに言われるまでもなく『待て』の状態で待機していたフライピッグが、ダラダラと涎を垂らしている。


「……ぶーちゃん、たべていいよ」

「ウホ―――――――! いっただっきま―――――――!」


ガフガフガフ! グッチャグッチャ! チュピチュピ! ベチョンベチョン!


「もうちっとキレーに喰えね―のかよこのクソ豚! っつーかどうやったら、ベチョンベチョン! なんて擬音が出るんだよ!? オノマトペの宝石箱か、オメーわ!」

「これがフライピッグ様の悪鬼羅刹喰い……! 惚れ惚れします……!」

「な、何だそりゃ……。オメーも変なやつだなあ、レッドラム……」

「バロック様にお褒めいただくとは……! 光栄です……!」

「(褒めてねーし)」


ウィーン……、と、自動ドアが開く。ゴッ、ゴッ、と、エンジニアブーツの硬い靴底が司令室の床を叩く。その間隔から、高身長の誰かさんが入室してきたことが察された。ジョゼだ。オレ様はゴク……と思わず唾を飲んだ。目の前でベルゼの髪を梳かしているアストリッドの手がピタリ、と止まる。


「へぇ、ここが中央司令室か……。ヴァイオラは休ませてきたよ。『翠緑のアストリオン』に包まれているから、じきに回復すると思う。しかし、すごい施設だね……」


ジョゼは知らないが、かつてジョゼが殲滅したシチリアの『悪魔使い』たちの中に、アストリッドのダチが含まれていて、暴走ジョゼの『黄金のアストリオン』に巻き込まれ蒸発しちゃってたんだよな……。それを知ったヴァイオラが『翠緑のアストリオン』で死者を黄泉帰らせ、アストリッドの信頼を得た、という経緯があったんだ。


「あ~~、アストリッド……、アイツは……」

「ああ、気にすんな、バロック。あたしは大丈夫さ。もうヴァイオラに救われた」

「(ホッ)それなら良かったぜ……」

「だが、ま、それはそれとして、だ」

「え?」


アストリッドはよいしょ、とベルゼを隣に座らせ、バッ! と立ち上がった!


「てめーがジョゼか。もう恨みはねーが、ケジメはつけさせてもらうぜ」

「……『悪魔使いディアボリスタ』……。シチリアの奴らの仲間……?」

「そうだよ」


ジョゼの眼の色が、みるみるうちに怒りの炎で染まる。ジョゼからしたら、殺された父の仇、その仲間が目の前に居るわけだからなあ。こうなる気はしてたけど、やっぱりそうなっちまったな。


「落ち着け、アストリッド。オメーもだ、ジョゼ」

「大丈夫よ。バロック。この娘、ここに居るということは、ヴァイオラの仲間なんでしょ。それは理解ってる。でも、言葉ではどうしようもないしがらみ、ってのもあるの」

「クックッ、理解ってるじゃねーか。あたしはあんたに友人を殺された。これだけはどうしようもねー事実だからな」

「頼むから研究所は壊さないでね……。実験デッキも壊したばっかりだし……」


三神のおっちゃんが口に手を咥えてオロオロしながら二人に懇願する。ガン飛ばし合う二人は殺気立ってはいるが、互いにヴァイオラの仲間だということは認識しているので、互いを認め、納得するためのプロセスがどうしても必要、ってこったな。


「必殺技ナシの殴り合いで白黒決めようぜ」

「フフ……、望むところよ」


ああ、やっぱりそうなりますよね……、という顔を、その場のほとんど全員がしていたと思う。状況を知らないベルゼ&フライピッグ、そしてもう1名を除いて。


「ええッ!? あ、あの戦闘狂で有名なウォルコーン様と戦えるんですかッ!? う、嬉しい……ッ! 光栄でありま――すッ!!!!」


レッドラム……。マジで感涙してるし……。ある意味スゲーわ、オメーはよ……




to be continued...

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