第25話 説明回はすっごい微妙、ネタバレも結構微妙
「何とかなりましたね」
「やっつけだったけど、まあ、結果良しってことで」
さっきの会議の後、廊下を歩くわたしたちの会話だったりする。
「アラマさん、どんな感じです? 疲れとか大丈夫ですか?」
「ええ、問題はありません。ですがあの会議は、ちょっと……」
「いやいや、はったりっていうのは大事だから……。大丈夫なんだよね、フォルナ」
「もちろん、無理を通します。道理を無茶で覆しますよ。フミカ様がいれば大丈夫ですから」
◇◇◇
そうなんだ。さっきのアレはパフォーマンスで、現時点でまともに『甲殻武装』を使えるのは、アラマさん以外にはフォルナくらいのものだったりする。まあ、フォルナは甲殻装備に関しては別格なので、員数外なんだけど。
「でも実現できるはったりなんでしょ?」
「もちろんです。道筋がはっきりした以上、やってのけられます。フミカ様の助力がありますから」
「まかせておいてよ。ガンガン蹴り飛ばすから、覚悟しておいてね」
「ええ、ありがとうございます。遠慮せず、蹴ってください」
なんか、ヤバい人の会話に聞こえるけど、これが真相なのだ。
実はアレ、新規開発したものじゃない。フォルナが以前に造ってお蔵入りしていた、失敗装備だったりするのだ。
そもそも、フォルナがやっていたことは、戦傷者の救済だった。どうやっても目や耳は無理だったけど、手足を義肢で補うという発想にたどり着いたのは彼女の天才的先進性だったと、わたしはつくづく思う。たとえそこに、木製の義肢という前提があったとしてもだ。
確かに甲殻獣はソゥド力を使っていた。人間だけではなく、力は遍く意思を持つ生物に、残酷な平等のもとに齎されていた。そしてそれは、死した後であっても。
だから、甲殻獣の骨を焼いた肥料を基に、田畑は実りを増やした。武器にしても、防具にしても、甲殻獣の装備は力を通した。すなわち『甲殻装備』だ。それをフォルナは応用した。それが『甲殻義肢』。戦うための力を、戦う術を失った者たちの救済の為に応用したんだ。
なんども繰り返しになるけど、ソゥドの力は意思の力だ。通す術があれば、あとは意思次第。逆に言えば、意思さえあればなんとでもなる。すっごいぞ、心万能状態だ。
んで、フォルナは思いついた。甲殻獣の骨を甲殻で包み、力を通るように加工した。その上で、関節包を間に挟んで、意思の力で曲げることに出来るようにして、後は『守り石』を通じて力を流す。
それが『甲殻義肢』だ。
それまでの『甲殻装備』との決定的な違いは、わかるだろう、操作できるってことだ。関節が存在して、自分の意志で動かす事も出来る。
当然フォルナも気が付いたらしい。これって、武装になるんじゃないか、って。
で、試験的に造ったのがさっきお披露目された、『甲殻武装』というわけだ。
◇◇◇
「うん。説明長いよね」
「フミカ様!? 申し訳ありません」
「いやいや、フォルナを責めてるわけじゃないんだよ、なんと言うか、言い訳的にどうかって、微妙なところかなあ」
こんなところで死蔵されていた、『甲殻武装』が日の目を見たのはわたしのせいだったりする。
本来、戦傷者の救済のために造られた義肢は、言ってみれば福利厚生の予算で賄われていた訳で、こういう方向性というか、攻撃性? 防御性? なんかは、まあ副次的なものだったモノらしい。
でも造っちゃったっていうのが、フォルナの言い分で、要は、造ったはいいけど、実用性が無かった、しかも用途外で予算を使うのは、いかなお姫様といえはばかられることだったということだ。
一たび使えば、壊れるかも分からん装備を大量に造るなんてことも許されるはずもなく、だけど、造ってしまったのは国を思えばものことであるし、さてどうしたものか、忘れてしまおうかと思っていた所に登場したのがわたしだった。
◇◇◇
どごぉん、どがぁん。
訓練場に鳴り響く音。
ひとつは『甲殻武装』を身に着けた小隊員が打撃を受けた音。もうひとつは、わたしがそれを蹴飛ばして、修復する音だ。
『壊れたら直せばいい』
凄まじい理屈だが、道理は間違っていない。いや、無理な道理が普通の道理を粉砕しちゃったということだ。
「良いですね。ケーシュタイン、どうですか?」
「はいっ! これは凄いですよ! 良い感じです! というか、うはっ!! うはははははああ!! 戦えます、戦えますぞおぉぉ!!」
うわぁ。
そういうわけだ。どういうわけだ?
わたしのハイヒールが、コストをぶち壊して、本来無かったはずのものを、光の下に再誕させたということか。
うん、間接的チートなんだろうか、ホント。
だけど、これは、一歩目に過ぎなかったんだ。本当の『甲殻武装』のその先の。
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