第15話 聖女認定
「盛り上がっているところを申し訳ないのですが、もう一つの議題です、父上」
「むぅ? 何の話だ?」
「いえ、今、目の前で会話して、勝手に願い出たではありませんか。聖女殿の事ですよ」
「お、おう、そうであったな。それで……なんであったかな?」
ノリノリでわたしに助力を申し込んだ大公様だけど、ヴァートさんのツッコミも当然だ。わたしも勢いで格好つけた返答をしてしまったけど、どれだけの戦力になれるのかも分からないんだ。
「あ、あの、わたしも聖女? の力がどれくらいものかは分かりません。正直、1度か2度回復させて打ち止めなんてことになったら、助力もなにもないんじゃないかと」
「それでも十分に凄い力です!!」
まあ、そういうことを言い出すのはフォルナだ。
「氾濫がフィヨルタまで及ぶにして、どれくらいの猶予が残されているのでしょう?」
「そうですね……」
ヴァートさんが顎に手を当てて考え込んでいる。
「早くて10日、長めに見積もって15日程度でしょうか」
「ならば、それまでに、フミカ様に出来ること、出来ないことを確認し、さらには、その上で助力をいただけるかを判ずるのが妥当かと」
うーむ。言っていることは正論だ。どうにも私の超常能力の過大評価があるような気がするけど、こりゃ実証実験は必要だわな。
「色々と考えるところはあります。人を生き返すことが出来るのか? どれくらいの重傷までなら直せるのか? 古傷なら? 人間以外でも回復できるのか? もしかしたらですが、甲殻獣すら直せるのか……」
最後は流石にヤバいと思いつつも、つらつらと言葉を紡ぐしかない。可能性は可能性なのだ。
「フミカ様のお力の検証については、わたくしとメリッタが担当いたしましょう。但し、この場におられる全ての方々に申し上げます。聖女フミカ様は、力を持ち、強靭な心を持つことは、先ほどまでの光景と言動を見れば一目瞭然でしょう。フィヨルトの姫として断言します。決して、フミカ様を侮らない様、蔑まない様、繰り返します。フィヨルトの名誉を持って遇することを要求いたします」
◇◇◇
場が静まり返る。そりゃそうだ。こんな異世界から昨日来ましたっていうのが、如何に力と特殊能力を見せたところで、味方か敵かもありゃしない。それをフォルナは、絶対的味方として遇するように要求しているのだ。
「畏れながら申し上げます」
今度は、メリッタさんだ。
「姫様の言に異はございません。もしフミカ様がフィヨルトに害を齎すようなことがありましたら、わたくしが命を持って、責任を果たしましょう」
重いって、いや、重いって、それはさすがに。要はわたしを殺して自分も死ぬって言っているわけじゃないの。そんなの求めてないって。
でもメリッタさんは、言い放った後で、わたしにむかってにっこりと笑顔を向けた。裏切れないじゃないか。こんなの。
だから堂々と言おう。
「わたしが先ほど、フィヨルタを見てみたいと言ったのは、『自分が守れるかもしれない方々を見ておきたい』という意味で申し上げました」
つまり。
「わたしに聖女としての力があろうとなかろうと、血を流しながら近衛筆頭様に勝利したのは事実です」
もう答えは決まっているんだ。
だって、格好良いから。
「微力を差し出しましょう。見返りは三食とベッドと、そして先ほど申し上げたフィヨルタ散策を要求致します。いかがでしょうか」
「感謝……、感謝する。力、言葉、心、貴殿を聖女として、フィヨルト大公国のすべてをもって認めよう。夕食までにはまだ少々時間がある。フォルナ、メリッタ。聖女殿を、我が国の誇る公都へと案内せよ」
そうさ、これがわたしの格好良さだ。
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