第13話 誰もが最初から分かっているさ。ハイヒールでハイヒール
広間にいた皆がわたしを見ている。見ている……、ってか服はボロボロだし、血まみれだし、どうして見ている。いや、確かにわたしが勝つとは思っていなかっただろうけどさ。
でも視線の先がおかしくないか? なんで、脚を見ているのさ? むちむちだぞ。
で、わたしも足元を見てみると、おいおいおい、なんか光っている。
足に装着された『ハイヒール』が薄緑色に光っている。
ついにきた超常現象に、思わず言葉が漏れる。
「これが、ソゥドの力……」
適当なことを言ってみた。それっぽいし。けど、周りの反応はちょっと違った。
「まさか、守り石……」
フォルナの声だった。『守り石』ってなんぞ?
「守り石だと!」
「靴だぞ。守り石!? あり得るのか?」
なんか凄い言われようだ。多くは動揺の声なのは分かる。わたしにどうしろと。
「ぐ、うぅぅ」
くぐもった声が広間に響く。今度はなんだ?
なんということだろう。ケートザインさんがこれまた薄緑の光を纏って、立ち上がる姿だった。こんなに早く意識を取り戻すとか、やるなあ。てか、捻ったはずの足首が元に戻っている。おいおい、ソゥドの力万能すぎないか? 自己ヒールときたか。
「流石はソゥド力ですね。自己回復しましたか。ケートザインさん、まだ続けますか?」
立ち上がってきたなら仕方ない。わたしもあと3分持つかどうかだけど、最後までやってやるさ。
「そんなものは無い!!」
大公様の叫びだ。無いって、何が?
「いやいやいや、確かに力を籠めれば治りは速くなるが、こんな、いきなり完全に回復することなどありえんっ!!」
じゃあ、何が原因? って、ああ、そういうことかあ。
この場にいる全員がわたしの足元を見ている。光っているハイヒールを。
ぐむぅ、どうしたものか。ああ、なんか血が足りない上にこんな状況で頭がくらくらしてきた。
そこで、危険な発想にたどり着いてしまった。禁断だろ、これ。でも、やるかっ!
「どおうりゃぁああっ!」
わたしは、ハイヒールを叩き込んだ。どこにって?
自分の額にだよ。
くらくらしているところに、自らのハイキックで後ろにぶっ倒れたわたしは、傍から見たらアホに見えるだろうか。
そして、例の薄緑の光が立ち上る。わたしの身体全体からだ。足に備え付けられたハイヒールもピカピカ光っている。
ああ、なんか力が抜けていくような、気持ちよくぽかぽかと……。
ふと気づくと、わたしは無傷になっていた。
もちろん、服も直っていないし、血まみれなのはそのままだけど、明らかに傷も治り、しかも失血状態まで回復されている。どんだけだ。
つまりは、えっと。
「ハイヒールでハイヒールってことですかね、これ」
わたしは立ち上がり、なんとも言えない気まずい気分を味わった。こういう時、なんて言うんだっけ? そうだ、あれだ。
「あはは、わたし、なんかやっちゃいました?」
よしっ、異世界チート、回収完了。
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