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 時刻、二十三時五十八分四十七秒——研究室。

 まずい、非常にまずいのでは? ヨヴは自分だけが正気なのだと一瞬で悟った。

 マシカの悪ノリ、ダラマは本気、フランに至っては何故こんなにも快諾ノリノリなのか——徹夜によるハイである。

 ヨヴは焦って説得を試みる。

「いや、いやいや、待ってくださいよ、人間は負荷がかかるんでしょう。だめですよ」

「内臓が傷つくぐらいなのだろう?」

 ダラマは大したことではないと言わんばかり首を傾げる。

「ぐらいじゃないんですよ! 人間は大怪我になるんですって」

「じゃあ、体に負荷のかからない時間ならいいんじゃない?」

 マシカは空いた椅子に腰を下ろし、ぐるぐると回っていた。

「負荷のかからない時間などないぞ」

「じゃあだめじゃないですか!!!」

「まあ爆発はしないだろう。都市伝説だ」

「ねずみはしてますけど!?」

「宇宙で爆発したとは限らないだろう。むしろ何故爆発した? 原因が知りたい。データモルモットを増やす必要がある。範囲を広げるか」

「誰か止めてこの人!!!!」

 何故ここに優がいないのか。ヨヴは泣きそうになりながら、フランのオフィスチェアを掴み揺らした。

 がくんがくんと前後に揺らされる巨躯はヨヴの手を振り払い、ぐりんと向き直る。

「……わかった」

「博士!」

「私も被験しよう。スポンサーの滞在時間はキープ。他の人間については今から安全な数値を打ち出す」

「なんで!??」ヨヴは白目を剥いた。

「さっすがフラン博士!」マシカは手を叩いて喜んだ。

「自分の命がかかると発想や知見に神懸かり的なバフがあるのだ。我輩もそういう人間を見たことがある」

「ええ……」

「神と言う言葉は些か好きではない」

「瞬間移動装置を発明する人間が、神以外の何だと言うのだね、ドクター」

 ダラマが眉を上げる。尋ねられ、フランは肘をついた。

「神を暴く側の研究者だ」

 モニターにSNSを映し出す。年越しを待つユーザーの投稿がが次々と流れてくる。

「さて比較対象も要るな。年越しジャンプを望む浮かれた愚か者——奇特——もとい、優れた発想の持ち主が集うといえば——初詣だろう」

 時刻、二十三時五十九分五十秒。

 フランはキーボードを恐ろしい速さで叩き、SNSから一つ、位置情報をピックアップした。

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