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境内では、人の賑わいがピークになっていた。
「もうすぐ年明けるぞ〜」
「あと三分!」
聞こえてくる参拝客の声に、お守りを捌きながら優はもうそんな時間か、と時計を見る。ちょうどまた、長針が進むところだった。
今年は後半から色々あった。九月、ヴァンパイアが二匹も住み着いた。それから、どうしてか優の周りは賑やかになった気がする。サークルのメンツの知られざる——能力というべきか、「聖人」という特性が分かり、その繋がりもあり、知り合いが増えた。なぜそこで増えるのかもわからないものだが……自分なら興味も持たないところにヴァンパイアが首を突っこむせいで、フランのような一生関わりのない人間や、大学になるとそうそう会うこともない、友人の父親とも知人になった。
ヴァンパイアの知り合いも増えた。ダラマのように、経営者として社会に溶けこんでいるヴァンパイアもいれば、人間とヴァンパイアの狭間にいる「ダンピール」という存在も知った。
またマシカとヨヴの——野生のヴァンパイアも人間と少なからず交流があった。かつて幼い頃に出会った少女や、唯一の交流相手となっていた人間の先生。それに—-杭手の母親の再婚相手はヴァンパイアだというではないか。ヴァンパイアと関わって生きている人間は、意外と多いのかもしれない。
さらに天使だ悪魔だ……考えてみれば、変な——嘘みたいな存在の知り合いばかりが増えている。思い返していた優は首を傾げた。俺の人生って、どうなっていくのだろうか。
郷に入っては郷に従え——とかつて、おじいちゃんは言った。
優自身もそうすることで、寡黙さ故に馴染めないなりに、うまく生きてきたつもりだ。流されるまま、平坦な人生を生きるのだと思っていた。だが、こんな出会いや生活は想定外だ。——自分自身の平凡さは、まるで変わっていないとは思うが。
来年はどうなるのだろうか。いつまでも、ヴァンパイアたちと棲むことはできないし、いつまでも先輩や友人たも側にはいない。そう思うと、なぜか心が沈み、ざわつくのだ。
「誰か、お守りの在庫見てくれませんかー?」
同じ売り場を担当していた巫女の声に、優はぼんやりとした意識を取り戻した。
「あ……俺行きますよ」
優は名乗りを上げ、奥の事務所に向かった。
「年明けまで、三十秒前!」
境内の方から、盛り上がった声でカウントダウンが聞こえる。優は段ボールの中から、お守りを取り出した。来年もいい年で……そう、願う。
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