新しい住人

 翌朝、目を擦りながら起き上がると。

 何か、ムニュッとした感触が手に感じる。

 え?

 と、思い。

 隣を見ると、ユカリさんがいた。

 手元は、ユカリさんのフトモモを掴んでいた。

 胸じゃなくて、良かった。


 これが、朝チュン?

 違うか?

 異世界で、在り来りな出来事だが。

 今まで、こんな事なかったのに。

 首を傾げながら、ユカリさんの顔を見ると。

 バッチリ、目が合った!


 「オハヨ?」


 「おはようございます」


 「ユカリさんは、何故ベッドに?」


 「昨日あの後、私一人で説明して。家の、使い方をレクチャーし。大変な思いを、して帰ると。気持ち良さそうに寝ているので、意地悪したくなってつい」


 「申し訳なかった、大変だったでしょ。すぐに、朝食にしますね」


 申し訳ない気持ちと、恥ずかしさから。

 ベッドから出ると。


 「朝食は、全員分お願いしますね。26人分と、精霊さん用にもお願いします」


 「了解!」


 今日は、目玉焼きと。

 薄切りにした肉を、生姜焼きにし。

 キャベツに似た、野菜の千切りを添える。

 後は、米炊いて。

 オニギリに、しようかな?


 スープは、無いけど。

 チカ達の、牛乳でいいかな?

 ご飯には、合わないかもだけど。

 栄養価は、高いと思う。


 表に出ると、人族の女性が扉の前で待っていた。


 「おはよう。どうしたの?」


 「全員の朝食を、作るというので手伝いに来ました」


 「ありがとう。料理は得意?後、他の2人は?」


 人族女性は、3人のはず。

 一人しかいないけど、他は苦手なのかな?


 「2人は、久々の自由な起き時間でいいので。二度寝しました」


 「そ、そうなんだ。君も、寝てて良いよ。いつもしてる事だから」


 「何もしないのは、落ち着かないので。手伝わせて、欲しいです。これでも、食堂経験者ですから」


 「それは、頼もしいね。じゃあ、手洗いからかな?中へどうぞ」


 「お邪魔します」


 何か、新鮮だな。

 昼間から、女性を家に連れこむみたいでドキドキしてしまう。


 「ここの、蛇口を捻れば水が出るから。こっちは、お湯ね」


 「蛇口?ですか?」


 「町?村?には、なかったかな?」


 「初めてみました!ちなみに私は、王都で暮らしていました」


 「そっか、まずは手を洗って清潔にして。それから、地下室を案内するよ」


 「こうすれば、オオ!水が出ましたね。洗い終わりました」


 何だか、楽しそうに話してくれる彼女は。

 笑顔も、可愛い。


 地下室へ、案内すると。

 ボーゼンと、している。


 「大丈夫?ビックリした?」


 「勿論驚きました!まず、建物より大きくないですか?」


 「そうだね」


 少し、キョドってしまう。

 2度目に、神様?に合った後。

 2部屋しかなかったのに、拡張され。

 7部屋に、なっていた。

 粋なことを、してくれる。


 「新鮮な、お野菜や果物。それに、お肉までついさっき用意したみたいで!」


 「そうだね。不思議な地下室で、時間経過が少なくてすむ。作り何だよ」


 「聞いた事がありませんが、魔石を利用した物でしょうか?それとも、神様の魔法ですか?」


 「神様じゃ、無いからね!今後ユウイチと呼んで欲しい。ちなみに、君の名前は?」


 「ユカリさんに、神様のような方だ聞いていたので。すみません。私は、リーラと言います」


 ユカリさん?どんな説明をしたの?

 後で、聞いておかないと!


 「リーラさんだね、了解だ。今日の朝食に使う予定なのは、卵と薄切り肉とキャベツ?これらを持って行くけど…」


 説明しているが、話を聞いているのではなく。

 地下室を、見ているリーラ。

 クルクル回っていて、可愛い。


 「リーラ!後で見ていいから。取り敢えず、これ持って上に戻ろう」


 我に返り、恥ずかしかったのか。

 顔を、赤くして付いてくる。


 上に戻ると、ユカリさんがいて。


 「何をしていたのですか?」


 と、怒っている様子。


 「?朝食の用意と、案内してただけだよ」


 「本当ですか?彼女は顔を赤くしていますよ!」


 「気にしなくて良いから!まずは、朝食にして。皆の自己紹介から始めよう。てか、ユカリさん昨日どんな説明したの?神様呼びされたんだけど」


 「知りません」


 と、ベッドがある部屋に行き。

 扉を、強く閉められた。

 俺が悪いの?


 簡単に、料理していくのだが。

 リーラの、質問攻めと驚かれてばかりで。

 朝から、疲れてしまった。


 朝食の用意が出来て、食べる場所を作る為に。

 大きめな、建物に入ると。

 中に、悪魔のゲイルと女性悪魔がいた。


 「おう!人様の家に、勝手に入るのかよ!」


 「え?ここは、食堂だから他にして」


 「んだよ!俺が、勝ち取ってここに住む事にしたんだぞ!嫌だ!」


 「勝ち取った?意味がわからんけど。今日は、ここで皆に食事をして貰う。明日までに、食堂を作るから。それまで、我慢しろよ」


 「しょうがねぇな、わかったよ」


 何故か、俺が建てたのに。

 俺が、頼む形に。

 おかしいな?


 リーラさんと、ユカリさんに手伝って貰い。

 食事を並べる。

 皆、疲れているせいか。

 誰も、出てこないので。

 リーラさんとユカリさんに頼み、起こしてきてもらう。



 「それじゃあ、皆さん。昨日は、お疲れ様でした。色んな思いが、あるでしょうが。まずは、朝ごはんを食べて。それから、自己紹介して行きましょう」


 26人ともなると、縦長の大きいテーブルもいっぱいになる。

 前からいた、村人達は。

 すぐに食べ始めるが。

 新しい住人は、悪魔2人以外。

 周りを、見ているだけだ。


 「どした?おかわりもあるから、ドンドン食べてくれ」


 それを聞き、だんだんに食べ始めるが。

 ペースが、一気に倍速再生されているように見えた。

 早送り?

 新住人は、がっつき始める。


 すぐに、おかわりはどこにあるのか。

 探す始末。

 こりゃ食べてられないや。

 食べる事を、諦めて。

 おかずと、ご飯の用意をしに戻る。

 あの建物に、ご飯はおかわり用に用意してあったが。

 足らないと、感じたからだ。


 最初用意した、3倍は作ったと思う。

 朝から、重労働だし。

 疲れて食欲もなくなり、俺は朝食を食べなかった。


 「さて、皆。お腹いっぱいになったかな?予定通り、自己紹介を始めようと思う」


 「こんな、うまい飯は何年ぶりだろう」


 「私は、初めて食べましたが。とても美味しかったです」


 「この白いのは、麦だべか?初めての、食べ物がこれなら。今後が、楽しみだべな」


 「もう死んでも、良い」


 「これが、米か?アイツが生きてる時に食べさせたかったな」



 「米って、この世界に無いの?」


 小声で、ゲイルに聞くと。


 「ねぇよ」


 最初から、地下室に存在し。

 無くなれば、補充される米。

 何処から、取ってきているのか。

 精霊さんに、聞く必要がありそうだ。

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