急展開

 「ユカリさん。どうして?」


 「皆、ユウイチさんに恩返しをしたいのです。安全な住まい。食料。家。全て、ユウイチさんのおかげです。」


 来るとは、思っていなかった。


 「皆来てくれたけど、相手の数が多すぎるよ。俺が、逃げ道を作るから。皆逃げて!」


 「1人で、抱えないで下さい。私達も、戦います!それに、強いですよこの相手は」


 剣を失い、1度後退した女性を見る。

 「俺では、刃が立たないけど。時間稼ぎなら?多分大丈夫!」


 「それに、これだけの大人数を。逃がすのは、難しいです!それより戦う事の方が、皆を守れるでしょう」


 正しい判断!

 それが出来ないから、こんな事になっている。

 臨機応変に、対応しないといけない。

 前世でも、よく言われた。

 いくら計画を練っても、絶対はない。

 後悔してないで、現実を見ないと…


 俺は、変わってないのかな?

 まず、現実を見る。


 ダールの所は、マークが暴れていて優勢の様だ。

 森側の兵達は、長いヤリ?かな?そのせいで、近づけず苦戦しているみたいだ。

 公爵側に、魔法使いがいるようで。

 石や水、火の玉が乱戦の中飛んでいる!

 ヒヨが、撹乱してくれているが。

 あそこが、一番ヤバイ!


 「ユカリさん。今から、公爵を盾に争いを止めます!その為、今から公爵の元に突撃します!」


 「はい!」


 朝日の光加減で、ユカリさんの瞳が輝き。

 女神のように見えて、惚れてしまいそうになる。


 「付いて来てくれますか?」


 「ハイ!」


 嬉しそうに、返事をしてくれた。

 気合を入れる為、自分の両頬を叩く!


 「スピード!乗ってもいいかい?」


 「勿論!」


 スピードに跨ると、全体が良く見える。

 「今から、あそこに飛び込み。ヒヨ達には、森側の援護に行って貰う。この3人で、公爵を捕まえるぞ」


 「「ハイ!」」


 「行くぞ!」


 スピードの、全速力に。

 ユカリさんは、少し遅れ気味だが。

 付いて来てくれる。


 身長は、俺より高く。

 スタイル抜群の、ユカリさん。

 蜘蛛足が、人と同じになり。

 見た目、人にしか見えない。

 もう、ユカリさんにメロメロかもしれない。

 絶対!やってやる!

 と、意気込んで突っ込む。


 こちらに向け、丸い石。

 サッカーボール位の物が、3発飛んでくる。

 それを、スピードが難なく避け。

 兵達の手前で、ジャンプする。

 着地点の、兵達は吹っ飛び。

 周り全て、敵。

 そんな中。


 「俺は、ユウイチ!目当ての人間が、ここにいるぞ!掛かってこい!」


 と、人族の言葉で伝え。

 次に、魔物語で。


 「皆!増援が来たぞ!森側を集中攻撃して、退路を確保しろ」


 すると、ヒヨが近づいて来て。


 「ユウイチ。ごめんなさい。私、何でもするから。許して下さい」


 今にも、泣きそうな言葉で伝えられ。

 俺が悪いのに、泣かせてしまい。

 心が痛くなる。


 「ヒヨ!必ず生きて帰るぞ!ここにいる魔物達を、森側に頼む!頼りにしてる」


 そう伝えると、嬉しそうに頷き走り出す。


 見送る暇もなく、兵達が攻撃してくる。


 後方は、ユカリさんに任せて。 

 両サイドに手を向け、水柱を下から吹き出すように。

 イメージする。

 見事に、足止めに成功し。

 前方に、火の玉を放ち。

 前進する。


 公爵が見えた。

 と、油断したタイミングで。

 女騎士?が、攻撃を仕掛けてくるが。

 ユカリさんの糸に、阻まれる。


 「ユカリさん。任せて良いですか?」


 「ハイ!ユウさんを、傷つけた野郎を許しません」


 「ちなみに、女性ですよ」


 「え?ユウさんは、こう言うのが好みなのですか?」


 「ほう。コイツを片付けたら、良い事するかい?」


 「タイプじゃないから!ユカリさんお願いね」


 冗談だよね?


 公爵に向けて、雷魔法を放つ。

 公爵との間にいた、兵達がくらい倒れる。

 公爵への道が、出来たので。

 石の玉、水の玉、火の玉、を、バンバン放つが。

 避けられたり、剣で弾かれたりする。

 公爵との距離が、近づいて。

 違う方向からも、公爵に向けて近づく戦闘音に気が付く。


 ダールを倒して、悪魔が来ているのかな?

 その程度の考えだった。


 「公爵。この争いを止める為。身柄を拘束する!」


 「そなたが、投稿すれば止まるぞ!我を、拘束するなど出来ぬ」


 「投稿は、しない!」


 そう言い放つと、剣を片手に。

 スピードの背から、飛び降り。 

 斬りかかる。


 剣を、3度打ちかわし。

 距離を取る。


 「剣は、我流のようだ。そんなのでは、我に勝てぬぞ!」


 力任せに、振っているが。

 これでも、剣道初段。

 やれると、思っていたが。

 実践と剣道では、違いすぎるようだ。


 「それでも、皆を守る為!この命をかけ、倒す!」


 意気込んでは見たが、剣で勝てない。

 魔法は、避けられる。


 「精霊さんいますか?」


 「いるよ」

 「やっちゃう?」

 「な~に?」


 「ユウイチとやら。お主が言う事が、事実なら。今、精霊に話しかけたか?」


 小声で、話したつもりが。

 聞こえていたようだ。


 「そうだとしたら?」


 「妖精ではなく。精霊を、信仰する者か。お前が何者なのか、興味が尽きないが。息子の敵として、殺さして貰おう」


 鬼気迫る、状況で。

 真ん中に、剣が投げ込まれる。

 そちらを見ると、そこにはガドム。

 そして、アーリアも。

 後ろに隠れているのは、シシとララだろう。


 「トバー・ガント様。お久しぶりで御座います。アーリアです」


 「生きていたか!神父から、病気で亡くなったと聞いたが。幽霊では、無さそうだな」


 「はい。その証拠に、シシとララもこちらに」


 シシとララが、アーリアに促され。

 公爵の前に、姿を見せると。

 絶句している。

 知り合いなのかな?


 「公爵様、詳しくお話したいのですが。この争いをまず、止めて頂けないでしょうか?」


 「しかし、息子はこの者達に殺されたと聞いている」


 「ヨーミ様の、事なら。ユウイチさんより、私の方が詳しく説明出来ます。何故なら、ヨーミ様が亡くなった時。ユウイチさんは、出血が激しく意識は無かったのですから」


 「ふ~。わかった。しばし待て」


 すると、公爵は天に向かい手を挙げると。

 凄まじい光が、天に登る。

 それを見た兵士達は、こちらに集まってくる。


 魔物や、悪魔達はその行動が理解出来なかったが。

 逃げ道が出来た為。

 逃げ出す者もいる。

 そんな中。


 「トバー・ガントの名において、一時休戦とする」


 と、大きな声が響き。

 シーンと静まり返るが。

 魔物達は、バラバラに勝利したかのような叫び声を上げた。


 ユカリさんに、抱きつかれ。

 やっと、終わったと。

 尻餅をついた。

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