後悔

 「奴隷達!私の盾になれ!」


 「騎士達は、何をしておる!早くコイツラを、排除しろ!」


 「助けて下さい」


 伯爵のいた天幕は、引き裂かれ。

 地面に横たわる、魔物達。

 男爵も、何人か殺されているようだ。

 どうして?

 何があったの?

 色んな思考が、駆け巡るがまず精霊さんに聞いてみると。


 「眠らせた悪魔が、暴れてるの」


 「逃げたはずの、魔物も暴れてるの」


 「人族を!どんどん殺してる」


 まじか!

 起きるの、早くないか?

 どの位寝ているのか、確認すべきだった!


 そんな事を、考えながらも。

 叫び声が、する方へ向かう。

 すでに、死体が複数転がる中。

 悪魔を、探しながら走る。

 あとから、俺の奴隷となった悪魔や魔物達もついて来る。


 見つけた!!!

 人に対して、剣を振り下ろそうとしていた。

 精霊さん!

 と小声でいうが、反応がない!

 仕方なく。

 悪魔に向かい、風魔法で吹き飛ばすイメージをする。

 が、少し体制が崩れただけで。

 倒れたり、吹き飛んだりはしていない。

 強いのか?

 次の手として、火の魔法。

 ファンタジー小説なんかに、よくある。

 ファイアーボールを、3つイメージして。

 悪魔に、飛んで行くイメージをすると。

 拳より大きめな火の玉が、悪魔めがけ飛んで行く。

 避ける事で、こちらを敵視して。

 俺を見る。


 「おい!良くも俺達を、あんな所に放置しやがって!殺されかけたぞ!」


 「眠らせただけでお前は、死ぬのか?」


 「んな訳あるか!小便に来た人族が、寝ている俺を見て殺そうとしたんだよ!」


 えー!

 それは、予想外だ。

 まさか、そんな事になるとは。


 「それで、こんな事を?」


 「違う。イヤ、それもあるが。今までの恨みだ!奴隷となった俺達を、好き勝手しやがって!あそこを見ろ!女奴隷を盾にして、逃げようとしてる。こんなクズたちを、生かす意味がわからん!」


 「こいつ等を殺せば、また捜索隊が来るぞ!」


 「生かしても同じ事!イヤ、生かした方が大軍勢で攻めてくるぞ!お前に、その責任が取れるのか?よく、考えろ!」


 俺が、間違っている?

 殺さずの精神では、皆を不幸にしてしまうのだろうか?


 考えにふける間も、戦いは止まらず。

 負傷者が、出ている。


 精霊さんが、当てに出来ない今。

 俺が、やるしかない!


 人族が殺されていて、魔物達も人族も一部開放され。

 誰が敵なのか、わからない!


 どうしたら良いのか?

 でも、争いを止める!


 そう思い。

 転がっている剣を拾い。

 悪魔目掛けて、斬りかかる。


 「俺は、この戦いを止める!その為、お前は眠ってろよ」


 「は!お前に出来るのか?殺す事が出来ない、甘っちょろいお前に!俺は、お前を殺す気で行くぞ!」


 「やってやる!」


 激しく、剣がぶつかり合う。

 移動しながら。

 人族に、襲いかかる魔物を見て。

 ファイアーボールならぬ。

 ウォターボールを、ぶつけて。

 気絶させようと、試みる。

 5人にぶつけ、3人は気絶させる事に成功するが。

 数が多すぎる。


 魔物奴隷は、50人位いたはず!

 魔物同士で、戦っているのは。

 まだ、魔物奴隷の所有者が生きている事を示している。


 「そんな余裕無いだろう!」


 悪魔に、蹴り飛ばされ。

 転がりながらも。

 魔物をウォターボールで、気絶させようとする。


 距離を詰める為。

 悪魔が、近づいて来る。


 「命令だ。こいつの足止めを全員でしろ!ただし殺すな!邪魔する者立ちも、殺さずにだ!かかれー!」


 すると、俺の奴隷となった魔物と悪魔は。

 指示通り、行動するが。

 「命令通りにするが、ジリ貧だぞ!」


 「俺が何とかするから、それまで頑張ってくれ!あと、死ぬなよ!」


 「それは、こいつに言ってくれ」


 俺の、手が空いたので。

 次々と、魔物を気絶させる。

 それと同時に、回復もして回る。

 ただ、死者は蘇らない。

 悔しい気持ちを、抑えられず。

 八つ当たりのように、魔物に魔法をぶつけてしまう。


 そんな中、魔物3人に囲まれる。


 「俺達を、散々コケにして。許さね〜」


 「俺達は、ゴミクズなんかじゃね〜」


 「私達は、あなた達の慰み者ではありません」


 そう言われ。

 やるせない気持ちになり。


 「すまない」


 「「「!!!」」」


 「言葉がわかるのか?」


 「悪魔が、俺達の邪魔をするのか?」


 「私達が!幸せになる邪魔をしないで下さい」


 幸せの邪魔?

 俺は、助けようと。

 そんな事を考えていたのが、悪かったのか。

 スキを、作ってしまったらしく。

 3人が、同時に襲いかかる。


 動揺していた事もあり。

 剣を弾かれ、足と腹を少し切られた。

 痛い!


 反射的に、強めにファイアーボールをぶつけてしまう。

 それが、女性魔物の顔にぶつかり。

 悲鳴を、上げる。

 え?

 そんなつもりが無かった。

 ユウイチは、動揺を隠せないでいた。

 それでも、攻撃はやまず。

 何度も、切られ。

 傷つき。

 倒れてしまう。


 「おい!何とかするじゃないのか?せめて、殺す許可を出すか。さっさと死んでくれ!」


 そんな声が聞こえ、立ち上がる。

 「何とかするから!大丈夫だ!」


 そう言って、自分に回復魔法を使う。

 回復を待ってくれるはずも無く、3人が襲いかかる。

 ウォーターボールを、連射して。

 3人倒すが。


 「ふざけるな!」


 「皆死んじまえ!」


 「…」


 2人の魔物に、ウォーターボールを再度ぶつけて気絶させ。

 ファイアーボールをぶつけた。

 女性魔物を、治療する。


 「今から、治すから。逃げてくれないか?」


 「どうして、治してくれるのですか?」


 「傷付けずに、皆を解放してあげたかったけど。ごめんね。俺一人じゃ、駄目だった。俺が、間違っていたんだ。ごめんね」


 何故ユウイチが、泣いてあるのかわからず。

 ボーと、見つめていた。


 すると

 「助けてくれ〜」


 と男性の声が。

 ウォーターボールを使いながら、助けに入る。


 「てめぇは、何なんだ!敵か味方か!?」


 「すまないが、今は眠っていてくれ」


 どうやら魔法で、無事助けられたようだ。

 「大丈夫か?」


 そいつに、手を差し出すと後ろを指刺される。


 振り返ると、同時に剣が降ろされる。

 ヤバイ!

 そう思った瞬間。

 横から、俺の盾になりかばう人が。


 その人は、剣を持っていたが。

 振り下ろされる剣を。

 抑える事が出来ずに。

 切られてしまう。


 訳がわからず、倒れる彼女を支える。


 「何故こんな事を!」


 「あなたが、助けようとした気持ちと同じです」


 そう言い、俺の顔に触れた手が、地面に付き。

 目を瞑ってしまう。



 「ウォーーー」


 ユウイチが、叫ぶ声がこだました。

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