夜襲

 「しかし、タイミングが良い。ヨーミが死に。跡取りがいなくなれば。後は、公爵を殺すか追い落とす事が出来れば。俺は…フハハハ」


 「伯爵様なら、あんな奴ら簡単に殺せますから。敵討ち、そして武勇も示せるでしょう。株が上がり公爵になれます」


 と、酒を注ぐのは狼達だ。

 酒で、出来上がった伯爵は上機嫌で。

 周りの、男爵達もおこぼれを貰おうとゴマをする。

 25人の人族は、伯爵1人、男爵9名、騎士15名となっている。


 人族の奴隷20名。

 女性15名。男性5名。


 魔物の奴隷50名。

 男性40名。女性10名。


 そして、悪魔5名。

 4名男性。女性1名。


 気になる奴隷の、主人は。

 何と、25名。


 伯爵と男爵は、女性奴隷を。

 騎士達は、男性奴隷の主であった。


 ただ、夜襲などしてくるとは思わずに。

 警戒しているのは、迷いの森側に。

 魔物奴隷を、10名配置しているだけで。

 呑気に、敵討ちした後の話で盛り上がっていた。


 笑い声を上げながら、伯爵達が夕食を取っている時。

 奴隷達は働き、その後残飯を与えられていた。


 伯爵と男爵達は、酒のせいもあり。

 早くに眠り。

 騎士達と、男性奴隷で。

 夜の警戒をしていたが、士気は低く。

 騎士達は、半分は眠っていて。

 警戒しているように見えて、穴だらけだった。


 静かにユウイチは、伯爵達に近づいていた。

 精霊達に、何処に奴らがいるか聞きながら。


 遠目から、明かりが見える位置まで来て。


 「精霊さん。1番は、悪魔の契約者。次に、強い魔物の契約者。なので、契約者が何処にいるか教えて下さい」


 魔物達とは、戦わずに。

 解放する事だけを、考えているユウイチには。

 夜襲で、眠っている契約者を。

 拉致し、魔物達を解放させる手を。

 繰り返すつもりでいた。

 1度に全て、解放出来るとは考えておらず。

 無理をしない!

 命大事に!

 やけにならない!

 と、自分に言い聞かせていた。

 それは、前世で失敗してきた事で得た。

 考えであった。

 やけになっても、いい事はない。

 散々、経験して来たことで。

 村の皆との、話し合いで失敗し。

 それを思い出し。

 これ以上失敗をしないように、気を引き締め。

 その結果、1度に解決しようとするのではなく。

 精霊さんに、頼った長期戦を考えていた。


 「あそこに、1人で立っている人が。悪魔2人の契約者だよ」

 「あのテントの中に2人。悪魔の契約者がいるよ」

 「あそこで、女の人族と話しているのが悪魔の契約者なの」


 「ありがとう」


 まず、周りから離れていて。

 1人でいる。

 悪魔2人の、契約者を狙う。


 と言っても、やる事は簡単で。

 精霊さんにお願いして、周りに気付かれないように眠らせて。

 拉致し、拘束する。

 目を覚まさせ、奴隷を呼ばせ。

 解放させる。


 奴隷になっていた。

 皆から聞いた話だと。

 奴隷と契約者は、遠く離れても。

 何処にいるか、わかるらしい。


 契約者を、拉致すれば不審に思いついて来る。

 付いてこなくても、暗がりから手招きでもさせれば。

 良いだろうし。

 取り敢えず、危険なく行えると思って。

 行動に移す。


 精霊さんの、指示に従い。

 そいつに近づき。

 眠らせてもらって、引きずりながら森の中へ。

 森の近くにいたし、暗いので見つかってないと思う。

 音を出さずに、引きずる。


 村から、出てくる時も使ったが。

 魔法で、結界魔法を想像すると。

 物質は、阻めないが。

 音は、阻めた。


 結界と言えば、入って来れないイメージなのに。

 音しか、遮れないなんて。

 と、使えた時落胆したが。

 意外と使える!


 30メートル程離れた時。

 精霊さんが。


 「5人来るよ!」

 「悪魔2人と」

 「魔物3人なの」


 5人?予想外だ。

 まだ、近いが。

 こいつを、起こす。

 両手は、用意していた糸を使った。


 ミサンガのように編まれた糸は、頑丈で素手では切れない物だ。


 「おい!起きろ!」

 2、3度顔を叩くと目覚める。

 「何も…」

 叫ぶのを、手を使い口を塞ぐ。

 「今、お前は拘束され!いつでも殺せる。俺の言うとおりにしろ」


 頷かれる前に、5人が来た。


 「おっと。これは意外な状況だ」

 人に見えるが、多分悪魔なんだろう。

 1人が、笑いながら話す。

 奴隷でも、命令なく話せるんだな?


 「今こいつに、解放させるから大人しくしていて欲しい」


 そう伝えると、皆が笑顔になる。


 「聞こえたな!今から、お前に1人ずつ解放して貰う。断れば、殺す!そちらの方が、早いからな!生かされてる事を理解できるな?」


 そう言われ、頷く。

 理解が早くて助かる。


 「まず、そこの悪魔を近くに呼び。解放して貰う。言葉を知っているから。騙せばどうなるか、わかるな!」


 そう言い、手をどかす。


 「こんな事して、どうなるか…」


 また、手で口を塞ぐ。

 「余計な事は、言うなよ!ヨーミと一緒に、死ぬか?」


 そう言うと、首を振るので。

 手をはなす。


 「おい!お前!こっちに来い」


 悪魔が、近づき話しやすいようにしゃがむ。

 「後ろを向け」


 そう言われ、悪魔は後ろを向く。

 無理矢理こいつの手を、首輪に持って行き。


 「開放しろ!」


 「妖精の名の下に開放する」


 そう言われ。

 『ガシャン』

 と、音をたて。

 悪魔の首から、首輪が外れ落ちる。


 悪魔は、首をさすりながら。

 体を確かめる。


 すると、振り返り。

 俺が、押さえつけている男の首を蹴り飛ばす!


 俺も一緒になって、ふっとび。

 体を、起こすと。

 止める間もなく。


 そいつの腰から、剣を抜き。

 首を切り。

 殺してしまった。


 「何故殺した?」


 悪魔に対し、臨戦態勢を取る。


 「大きな声をだすな!こっちの方が早いし、他も助けるつもりなのだろう?それに、俺は今自由だ!何なら、お前も殺すか?」


 どうやら、開放してはいけないやつを。

 解放してしまったらしい。


 「俺の名は、ユウイチ。しいて言うなら、奴隷を開放する者?だ」


 魔物を見て、喋ったから。

 魔物語に、なっていると思う。


 魔物達は、驚き。

 悪魔は、俺を悪魔と思ったのか。

 驚きは、しなかった。


 精霊さんに、小声でいつでも5人を眠らせられるように伝えた。


 「こいつは、騎士の中でも優秀で。奴隷は、後3人いるはずだ。逃げ出してなければだが。まだ、奇襲がかけられる。どうするよ大将?」


 「逃げたい者は、逃げて良い。これは、俺の自己満足だから、気にしなくて良い!もう1人。奴隷女性が、皆と離れた場所にいるから同じ方法を取る。暴れるのは、待って欲しい」


 そう言うと、悪魔2人は暴れさせろと言うし。

 魔物3人は、逃げると言う。


 予想外ばかりで、もうすでに。


 1人で来た事に、後悔していた。


 逃げ出したい気持ちを、ぐっとこらえて。


 作戦を、続行する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る