精霊様

 お昼すぎ。

 お腹が空いて、家に戻ると。

 中に、牛さん達がいた。


 「お帰り〜」

 「ご飯まだですか?」

 「牛乳届けた」

 

 「ただいま。何してるの?3人とも。お昼まだなの?食材は、渡したでしょ。料理して食べれば」


 料理?

 と魔物達は、焼くか、生で食べる事が多い。

 教えてくれる人がいないと。

 料理自体、知らないようだ。


 「牛さんの中で一人。料理手伝ってくれる人」


 手を上げて待つと

 「ハイ」

 1番背の低い子が、手を上げる。

 と言っても、俺の身長は170センチ位で。

 その子は、168センチ?

 残り2人は、俺よりでかい。

 

 キッチンで、お米を研ぎながら。

 料理を、教える。

 と言っても、包丁を持つのも初めてだし。

 簡単な事だけ。

 テーブルに、6人分並べる。


 「ユウさん。一人分多いですが、誰の分ですか?」


 「あ~。精霊さんの分なんだ。見えないけど、仲良くしてほしい」


 「精霊さん?精霊様がいるのですか?」


 「いるよ」

 「胸デカーイ」

 「お腹すいた」


 精霊3人が答えるが。

 声は、俺にしか聴こえない。  「精霊様?魔物にとって、どんな存在なの?」


 「神様?」

 「いたずら好き?」

 「助けてもらった」


 「何となく、わかった。まず食事にしよう」


 牛さんが3人いると、呼びづらい。

 さて、認めて貰ってないし。

 考えるのも、面倒臭い俺は。

 何か、いい案がないか聞くと


 「精霊様と、お話できるなら」

 「精霊様と、一緒なら」

 「精霊様が、認めるなら」


 と、俺の事を認めて名付けをして欲しい。

 そう言われた。

 大丈夫?

 ホントにいいの?

 何度も確認し。

 名付けした。


 「チナです」

 「チヨです」

 「チサです」

 「「「宜しく主!」」」


 安直な、名前だけど許して欲しい。

 ネーミングセンスは、無いのだ。

 センスゼロと、生前言われたものだ。


 これで、わかりやすい。

 名付けを、すると。

 やはりパスのような、何かで繋がった気がする。


 奴隷じゃなくて、家臣?

 いまいち理解できないが。

 いっか?


 そう言えば、ユニコーンさんを忘れてる。


 宴会の時も、遠慮してか。

 隠れていた。

 俺は、無理矢理命令された。

 ユニコーンさんを、少しも恨んでいない!

 多分。

 それより、あの綺麗な馬の背に乗りたい!!!


 馬に乗った事はないけど、ユニコーンさんには乗りたい。


 昨夜。

 肉を持って近づき。

 「ユニコーンさん。これ食べませんか?」


 「私には、生きる価値もありません。殺して、私を食べて下さい」


 「えー!無い無い!それは無い!食べないから!俺は、寧ろ、君が欲しい」


 そう言うと。

 「貴方はそういう思考を、お持ちの方でしたか。私は、受け入れられません。もし望むなら、奴隷の首輪をして命令して下さい」


 「ウッソ。ダメ?どうしてもダメ?背中に乗り。散歩したかったのに」


 「え?そんな事なら、お安い御用ですよ。私みたいなダメな魔物。生かして頂けるだけで有り難いです」


 ダメじゃないの?

 まぁいいや。

 もう暗いし、明日乗らせてもらおう!


 こんな大事な事を、忘れるなんて。

 疲れてるのかな?

 飯食ったら、ユニコーンさんに乗り。

 散歩だ!


 食事を、急いで食べ。

 村の中を探す。

 だが、すでにユニコーンさんは、クマさん達と狩りに出掛けた後だった。


 ため息を、付きながら。


 家に戻ると。

 桶から水を、鶏さんがくんでいた。


 「鶏さん。もし良かったら、家の水道なら。いつでも、水が出ますよ」


 「本当ですか?」


 中に案内し、蛇口をひねる。

 神様に感謝だよね。


 水が簡単に出てくる。

 当たり前のようだが、ここ以外で。

 水を、手に入れようと思っても。

 方法が、わからない。


 土魔法で、水瓶を作る。

 物作りスキルも、作用しているみたいだ。


 「チサ、チヨ、チカ、各家に持っていってくれないか?」


 3人に、重たい水の入った。

 水瓶を、運んで貰う。

 苦しそうでは無く。

 楽しそうに、しているので。

 かなり、力持ちなのだろう。


 3人と鶏さんが、出ていくと。

 アーリアさんが、訪ねてきた。

 「二人きりで、お話があります」


 ユカリさんに、席を外すようお願いする。

 言葉は、通じないが。

 深刻そうだったので。

 言われた通りにした。


 「ガドムさんは、人ではないのでしょうか?奴隷にされた時。かばってくれて。守ってくれて。頼りに、していたのですが。違うのでしょうか?」


 「落ち着いて!深呼吸!て通じるかな?」


 通じたようで、深呼吸している。


 「私の口から、言っていいのかわかりませんが。あれだけ皆の前で。色々な言葉を話したのです。バレる事は、覚悟の上でしょう」


 「彼は、悪魔です。でも俺は、人族も、魔物も、悪魔も、言葉が通じれば。仲良くなれる。信頼し合えると、思っています」


 「彼は、私達を騙していたのです。悪魔だったなんて。今更…」


 「彼は、だまつもりはなく。ヨーミに、絡まれた所を助けてくれた。アーリアさん達を、守りたい。そう言っていましたよ」


 「そんな事で。私達と、行動をともにしていたと?」


 「俺に、アーリアさん達を裏切ったら殺すと、言われました。ガドムさんは、悪い方では無い。俺は、そう思っています」


 「私達は、今後どうしたらいいのでしょう?」


 「私は、アーリアさんに。魔物の言葉を、覚えて欲しい。そう考えています。いずれ、シシとララにも。言葉を統一し。住みやすい村にしようと思っています。が、強制はしません」


 「そのような考えが、お有りだったのですね。素晴らしい人だと思います。ですが、私には返せる物がありません」


 「いりませんよ。気になさらずに。俺のスローライフの為ですから」


 「スローライフですか?よく分かりませんが、私に、出来る事なら頑張ります」


 「ガドムさんには採掘を、お願いしているので。明日から、少しずつ私が教えますね」


 「宜しくお願い致します」


 「良い子ですね」

 「この子危険なの」

 「お腹いっぱい」


 精霊さん?

 良い子なの?

 危険なの?


 大丈夫だと思うけど。


 食事は、暫く。

 全員で、食べる事にしようと思う。

 生肉。果物。野菜。

 渡すと、そのまま食べるので。

 料理を、教えながら。

 覚えてもらう事にする。

 アーリアさんがいれば、2人で教える事になるし。

 そこまで、時間もかからないと思う。


 その為。

 それ専用の、家も立てた。


 夕食の時。

 皆に、精霊の話をした。

 俺には、精霊に愛される者。

 そういった能力があると。


 今も精霊の声が、俺には聞こえている。

 食事も、一緒にするけど驚かないで欲しい。


 そのように、伝えた。


 皆驚き。

 神様だった。

 ユウイチ様は、神の使い。

 精霊様。


 俺の事を、受け入れてくれるみたいだが。

 神様呼びは、全否定した。


 俺自身は、凄くないし。


 「苦しゅうない」

 「ユウイチは、凄い」

 「アラアラ、ウフフ」


 精霊達の、反応を見て。

 この先。

 どうなってしまうのだろう?


 不安ばかりだ。


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