チート

 部屋の中に、蜘蛛の糸で寝床を作ろうとするので。

 「ちょっと待って下さい。同じ部屋で、綺麗な方と過ごしたことが無いので。俺がキッチンで寝ます。なので、ユカリさんは。このベッドを使って下さい」


 「なぜですか?ここならユウさんも通れますし。邪魔にならないと思ったのですが?ダメですか?」


 人間が怖いのでは、なかったのだろうか?

 女性と一緒の、部屋なんて!

 精神的に、俺がダメ?

 神様とか呼んでたから、俺の事を人間と思ってないのかな?

 「俺も、人族の男です。綺麗な方と一緒だと、変な気を起こすかもしれません」

 「人間が、私に魅力など感じないと思います。いつも化け物だとか、暴力を振るおうとするのに。ユウさんは、おかしな事を言うのですね」

 あれ?俺がおかしいの?

 そんなはずないでしょ!

 俺じゃなく、この世界がおかしいみたいな?


 突然、精霊?さんが。蜘蛛の女性を連れてきて。

 一緒に暮らす事に。

 意味わからん。

 何でこうなるの?

 俺が、誘った形になったけれど。

 社交辞令的な、感じだったのに。

 家が無いと、寂しいしね。

 夕飯は、ステーキとサラダとご飯。

 あと、プリンだ。

 ユカリさんが、食べられるか心配だったけど。

 「美味しい。こんな美味し物を食べたのは、初めてです」

 「いつもは、何を食べてるの?」

 「木の実とか、果物。あと、鳥ですかね?」

 想像と違う!

 蜘蛛だし、虫とかだと思った。

 魔物の生体とか本なかったかな?今度探してみよう!


 物作りスキルのせいか、料理もそうだが。

 出来上がりを、想像して。

 物を作ると、異常に早く出来上がる。

 それも、想像通りの物が出来る。

 チートだ。

 魔法も、異常な程で。

 想像して、使うとその通りになる。

 風で、弓と矢を想像して構え。

 放つと、木に風穴を開ける!

 こんな力。望んだ覚えがないんだが!


 ユカリさんの話だと。

 人間と魔物の共存は聞いた事がなく。

 倒すか、捕まえて奴隷にするからしい。

 奴隷の首輪と言うものがあり。

 それを、されると付けた者の言う事を拒めなくなるそうだ。

 怖いな〜異世界。


 魔法チート。物作りチート。後は身体能力の確認?

 普通の引きこもり予定?だったのに。

 なぜこうなったし?


 不思議な事に。

 倉庫の棚に、貰った糸を保管して置いたら。

 糸の横に針が何本もあり、でも布は無くて。

 精霊様?は、助けてくれるけど。

 出来る事と、出来ない事があるみたいだ。


 何事もなく、朝を迎える。

 ユカリさんは、糸のベッドで寝ていた。

 何本もある足を曲げて、器用に眠っている。

 寝顔も可愛い。

 生前こんな女性と仲良くなれたら、人生変わっていた事だろう。

 外に出て、木で作った桶に水を貯める。

 全て魔法で、出来てしまう。

 本当なら、世界を周り。

 チートを駆使して、ハーレムなんて思うものなのかも知れないが。

 俺は、全然思わない。

 のんびり生活できたら、それでいいと思う。

 色々作れるのだし、物作りを楽しもうと思いながら顔を洗っていると。

 「おはよう御座います。ユウさん。夢ではなかったのですね」

 「おはよう御座います。ユカリさん。夢?とは?」

 出て来たユカリさんが、裸なのは触れずに置く。

 「人間と暮らすなんて、夢としか思えず。怖くないのも不思議ですし。昨日の事を、夢のように思えて。すみません」

 「謝る必要はないのですが、なぜ裸なのか聞いても?」

 「あの、セーターを汚すのは忍びないので。部屋で、着るようにしようかと」

 逆じゃね?と思い笑ってしまった。

 とすると、服をいっぱいあれば外でも来てくれるかな?

 想像すれば、何でもできる!

 そう信じて。

 糸と針を用意。

 糸は、大量にある。

 理由は、わからないが出来てしまった。

 Tシャツが!

 え?なんでできるの?と思うが、出来たものしょうがない。

 色を想像しても白が赤くなる事は、ない。

 赤い木のみをすり潰し。

 赤い染料として、糸をつけてみる。

 赤い実。青い実。紫の実。倉庫に、色々あったので。

 試す。

 減っても、自然と増えてるし。

 色付き糸を大量に作るのに、何日も掛かった。

 その間、ユカリさんは糸を出したり染める作業を見ていたりした。

 暫くして、ユカリさんと俺の服が大量に出来た。


 ユカリさんは、糸を出すのと。

 見て覚えたのか?

 染める作業を、楽しそうにやってくれる。

 倉庫には、山のように溜まってきていたが、辞めるように言う事が出来なくてどうしたら?

 と悩む。

 糸は、腐らないし倉庫を別に作ろうと思う。

 が、大工の仕事はしたことが無い。

 破壊工事なら、経験あるのだが。

 とりあえず、気を何本か切り倒し。

 板状にして。

 作る予定の場所に、集める。

 他にも、何本か横におき。

 小屋をイメージして、作ろうとすると。

 怖くなった。

 出来てしまったのだ!

 木を乾燥とか。

 釘は?とか思うが。

 釘を使わない家が、出来てしまったのだ。

 前々からユカリさんが、俺の存在を神様と言っていたが。

 今回は、本気でユウさんは神様でした。

 と言うので、違うと説明するのに苦労した。

 俺の世界。

 俺の過去の事は、ユカリさんに話している。

 多分精霊さんにも、伝わっているはず。

 最近は、精霊さんの感情がわかる気がしていた。

 褒めると、嬉しそうだったり。

 できない事を言うと、悲しんでいたり。

 何となくだが、簡単なコミュニケーションができているような?

 姿が見えないから仕方ないか?


 恩返しは、何も思いつかない。

 妖精と言って、離れてしまったから。

 精霊さんと呼んでみた。

 すると、嬉しそうに感じた。

 精霊が、今まで自分を助けてくれていたのだ。

 自分には、他種族に好かれる性質でもあるのだろうか?

 不思議だ。

 いつか、精霊さんと遊んだり。お喋りしたい。

 そんな事を考えながら、物作りに励む。

 物を作るなら、置ける場所が必要だ。

 その為。

 木を、住処を中心に伐採していく。

 楽しくて、やりすぎた感が半端ない。

 一人で、スローライフするのに。

 村を作ってしまった。


 ?て思うかもしれない。

 でも、作ってしまった。

 家を作れるし、家具も簡単に。

 何より、魔法を使っても。

 物作りしていても、疲れない。

 本当に楽しくて。

 ユカリさんも、楽しげに、手伝ってくれる。

 たまに、どこかに行ってしまうが。

 俺との繋がりができて、離れても。

 この場所がわかるらしい。

 俺には、よくわからない感覚だ。

 作ってしまった。

 村を!

 人間一人。魔物一人。精霊さん達?

 今後どうなってしまうのか?

 俺にもわからない。

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