第23話 混乱するイークウェス


「イークウェス! イークウェスっ!!」


 王女はデウスが生き返らせた護衛をブンブンと揺さぶっている。


「王女さま、私はここに居ますから! どうか落ち着いて下さい!!」

「落ち着いていられるもんですか! あなたが死んでしまった時、私がどれだけ不安だったことか!!」

「……私が、死んでいた?」


 どういう事ですか?と言いたげな顔をして王女の顔を見上げた。その時、イークウェスは若い男女がいることに気づいた。


「何者だ!? お前ら、あの盗賊の仲間か!?」


 イークウェスがボロボロの身体で剣を握りデウスに斬りかかる。しかし……


「動くな」

「なっ……」


 イークウェスは完全に動きを封じられた。困惑するイークウェスに王女がザッザッと強く地面を踏みながら近づいた。


 バシン!!!


「イークウェス! 止めなさい!! 命の恩人に向かってなんてことを!!!」


 盛大なビンタを食らうイークウェス。痛そうだな……とデウスとフィリアは顔を見合わせ苦笑いをした。


「イークウェスさん……でしたっけ? 初めまして。僕はデウス=リーグレットと申します」

「私はフィリアと申します。生還いただけて何よりです」


 お、おう……とイークウェスは微妙な返事をした。


「改めまして、私はトリスタン王国第2王女、フォルトゥナ=ウィンクルムと申します。命を救っていただいた上、護衛のイークウェスを蘇生までしていただき、なんとお礼を申し上げればよろしいか……」

「いえいえ、そんな! 王女さまが頭を下げるほどのことは致しておりません! 頭をおあげ下さい!!」

「いいえ! 王女として、感謝すべき相手には感謝を伝えるのは当たり前のことです! 後日謝礼をさせてくださいませ!!」


 あまりの勢いに、デウスとフィリアは首を縦に振らざるを得なかった。


 このやり取りを見ていたイークウェスは、周りを見渡し驚愕した。


(盗賊がことごとく殺されている……残りはあの氷の中にいる4人は……ん? 氷?)


「氷魔法ですと!?」


 イークウェスが叫び、周りの3人は盛大に驚いた。


「氷魔法……あなたがたが?」


 おそるおそるデウスとフィリアを見上げる。


「えぇ、デウスさまは盗賊全員の動きを封じ首を切りつつ、死んだあなたを蘇生しました。フィリアさまは見ての通りの氷魔法で残りの盗賊を閉じ込め、私を守ってくださったのですよ」


 なぜか王女が自慢げに胸をはる。


「言いたいことはわかりますね? ここまでの力を持ち我々を救っていただいたこの方たちにあなたは無礼を働いたのですよ?」


 イークウェスの顔がみるみる青ざめる。


「そんな……ご無礼をお許しください!! 罰はこの身のみに……王女さまに非はございません!!」

「えぇ、もちろん王女さまには全く非はございませんよ。何を当たり前のことを?」

「どうか……私の命でご容赦くださいませんか……」


 フィリアがいたずらっ子の顔でイークウェスをいじめる。イークウェスは血の気の無くなった顔で再度謝罪する。


「許すもなにも、盗賊に殺されて生き返ったら僕たちがいたんだ。間違えもするよ。それにどうしてせっかく生き返らせたのにまた殺さなくちゃならないんだ?」


 それはそうと……とデウスは監獄の方をみる。


「神懸りをしてからやっぱり身体がきついな。霊力回復も兼ねて、頭の1人を残して後はまたみんな殺さなきゃな」


 デウスは監獄の方を睨みながら低い声でそう呟いた。イークウェスはデウスの言動の変わりように驚きを隠せずにいた。

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