第24話 救いようのないクズ


 スタ、スタとデウスは氷の監獄に歩み寄る。


 盗賊たちは恐怖に顔を歪め震え上がっていた。


「旦那ぁ! 悪かった、俺が悪かったから……もう悪いことはしねぇし、盗んだものも女も返すから許してくれよ……。 そうだ、俺だけでいい! 俺だけ助けてくれ!!」


 この頭は救いようのないクズだなと思いながらも、気になることを言っていたから話を続けることにした。


「その盗んだものと女とはどこにいるんだ?」

「ここの丘をくだったところに小さな洞窟がある、そこだ!!」


 デウスはフィリアに目配せした。


「えぇ、行ってくるわ。女性の保護は女性でなきゃね!」

「あぁ、頼んだ。……の前に、こいつ以外の3人の動きをとめてくれないか? あと盗賊たちを殺せるように入り口を作ってくれ」

「ったく、しょうがないわね!」


 やれやれとフィリアがこちらに来る。


「黒より暗き闇よりいづる魔の手よ

 その身体をむしばみ自由を奪え! 神経麻痺パラライズ!!」


 フィリアの影が手のように伸び3人の盗賊の足を掴む。その瞬間、盗賊たちはパタパタと倒れ、白目をむいた。その後フィリアが監獄の氷に触れると、監獄に小さな入り口ができた。


「ありがとうフィリア。じゃあそっちは任せたぞ」

「はいはい、任されましたわよ〜」


 フィリアは丘の下の方に駆け下りて言った。


「おい、デウス! フィリアを1人で行かせて大丈夫なのか? もし他の盗賊がいたら…」

「大丈夫だ。フィリアはそう簡単に負けたりしない。」

「えぇ! もちろんですわ!」


 だからなんで王女が一番自慢げなんだ?とツッコミたくなるデウスだった。


「さてと、こっちはこっちでやることをやるか」


 デウスはナイフを持ち、痺れている3人の首に次々と刺していった。死んだ盗賊から霊力が浮かび、デウスに吸収される。


 その一連の行動を初めて見たイークウェスは恐怖を感じた。


(どうして平然と無抵抗の人間を殺せる……? そしてあの白いもやもやはなんだ……?)


「おい! デウス! 何も無抵抗な人間を殺すことないだろ!」


 デウスはギロっとイークウェスを睨みつける。


「無抵抗? さっきまで人を襲い荷物を奪い女を犯していたやつらだぞ? 死んで当たり前だろ? しかもこいつらはお前やお前の仲間を殺し、王女を手にかけようとしていたんだぞ? 何も守れない無能が口を出すな」

「……っ」


 辛辣な言葉だった。ぐうの音も出ないほどの正論だった。これ以上イークウェスは何も言うことは出来なかった。


「あとはお前だけだな、お頭さん?」


 ひぃぃ……と盗賊の頭は震え上がる。


「王女さまがお前は生かして王都に連れて帰り裁きにかけたいんだとよ。だから殺しはしねぇ。だがな……」


 とりあえず、と付け加える。


「自分で両足の腱を切れ。その後両手を広げて重ねて俺に差し出せ」

「そんな、そんなこと出来ねぇよ!!」


 口では抵抗する盗賊の頭の手は意識と関係なく自分のナイフを握り、足の方に手を伸ばした。わなわなと震えるその手は、自身の足の腱へと伸びていった。

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