第13話 死闘


「こんなときに冗談なんか言わないで!!」

「冗談なものか! ここに居たら2人とも殺されちまう! 俺が死んでも足止めするからその間に逃げろ!」

「そんなこと出来ないっ!!」

「いいから行けっ!!」

「……っ」


 状況的にはデウスの言うことが正しいのだろう。フィリアも怖くて怖くてたまらない。


(でも……デウスは私が守るって決めたんだからっ……)


「デウス! ちょっとそこで寝てなさい! ちょっと本気出しちゃうから巻き込まれないようにね!!」

「フィリアっ!!」


 フィリアは決意した。自分が倒さなければデウスは死んでしまう。なんとしてでもこのアシッドタイガーを倒す。出来なければ……せめて、デウスと一緒に死ぬ。その決意を。


「ガルルッ!」


 アシッドタイガーがフィリアに飛びかかる。それを間一髪で避けた。それとほぼ同時に詠唱が始まる。


「虚無の理よりいずる壁よ

 我を包みて防壁となせ  防壁プロテクション!!」


 フィリアを包むように、固い鎧がまとわれたように防壁が展開された。さらに……


「空を翔ける風よ

 我が背中を押し助けたまえ 音速加速ソニックブースト!!」


 フィリアの動きが格段に上がった。動きが早くなり、防御壁もまとっている。そう簡単にやられはしないだろう。


「さぁ! かかって来なさい!!」


 フィリアがアシッドタイガーを挑発する。動けないデウスから少しでも意識をそらそうとしているのだ。


「ガゥガゥ!!」


 アシッドタイガーは懸命にフィリアに攻撃するがフィリアには直撃しない。かすったところで防御壁が少し欠ける程度だ。


「今度はこっちの番よ!」


 フィリアの両手から魔法陣が浮かぶ。


「轟く雷鳴の一閃よ

 我が意に従い敵を撃て  雷光ライトニング!!」


 雷の様な電撃が放たれる。しかしアシッドタイガーはギリギリでそれを避ける。……が、フィリアもそれは承知だ。


「母なる大地よ

 地を割り敵を沈めよ 落とし穴アースホール!!」


 地属性魔法で出来た地割れに近い大穴にアシッドタイガーが沈んだ。


「はぁ……はぁ……デウスっ! 今のうちに逃げるわよ!」


 フィリアはデウスに駆け寄って行く。フィリアも魔法の使い過ぎで息を切らしていたが、そんなことは彼女にとってどうでもよかった。今はただ、デウスと一緒にここから……


「フィリアっ! 後ろ!!!」


 デウスの声に驚き振り返ったフィリアの視界は、フィリア自身の鮮血で赤く染まった。

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