第10話 白いもやもやの正体
ファストキャットから吹き出したもやもやは全てデウスに吸収された。
その一部始終をデウスは朦朧とした意識の中眺めていた。
(なんだろうこれ……魔獣の毒とかか? そうか、毒ならもうこの身体は持たないな。フィリアの言う通りにやめておけばよかった……)
そう考えたのもつかの間、デウスは自分の息切れがだいぶ楽になった事に気づいた。
(一体何が起きたんだ……? でもこれなら少しは動ける。)
「フィリア!」
デウスは目の前の光景を呆然と見ていたフィリアに呼びかけた。
「ファストキャットから出てきた白いもやもやのおかげで少し楽になったんだ。あれって何かわかるか?」
「いいえ、私も初めて見たわ! 私が倒した方のファストキャットからはあんなの出なかったから…魔獣だからというわけでは無さそうね」
そうなのか、とデウスは少し残念そうに呟いた。
また同じことが出来れば身体の辛さは消えてくれるのではと思っているのだ。
「デウス。さっきのもやもやなんだけど、デウスが言霊の力を使う時にもデウスから同じのが出てたわよ?」
「えっ? そうなのか? 言われてみればそんなのも見えた気も……」
「だからデウスの身体から出ていった分のもやもやが戻ってきたら、デウスの息切れも止まるんじゃないかしら?」
そこまではデウスもフィリアも同意見だ。フィリアは続ける。
「でもさっきの感じだと……デウスが自分で殺した魔獣からだけもやもやが出てくるんじゃないかしら?」
なるほど、とデウスは思った。そこまで聞いてデウスは考えを巡らす。
(言霊の力を使うともやもやが出てきて身体がきつくなる。そして僕自身が倒した魔獣からのみ同じもやもやが出てきて僕に吸収される。すると僕の身体は楽になった……)
そこでデウスの思考は1つの結論に落ち着く。
「もしかしてフィリア。あの白いもやもやは霊力じゃないか?」
「霊力? 聞いたこともないわね?」
「言霊の力は言葉に霊力を宿すことで作用出来る。つまりあのもやもやは霊力だと思うんだ。そして霊力を使うことが出来る僕自身が殺した魔獣からのみ霊力が吹き出し僕に吸収された」
「それってつまり……」
「僕は魔力ではなく霊力を扱えるんだと思う」
魔力とは違う力、霊力……。この力によって、彼がのちに救国の英雄と呼ばれるSランクパーティ≪神々の代行者≫の代表となり、魔法を使う者たちの頂点『魔導師』の称号を得ることになるなど、この時の彼らには知る由もないことである。
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