第9話 魔獣から吹き出すもやもや
デウスの声にびっくりしてフィリアは止まってしまった。しかし動けないわけではない。デウスはフィリアに対して止まれと言ったわけではないようだ。
「デウス……?」
デウスの方を見ると、デウスの視線の先。フィリアから1メートルに満たない後方にもう1匹のファストキャットがいた。しかも、飛びかかろうとする直前の姿勢で固まっている。
「デウスありがとう! 助かったわ!」
改めてデウスを見ると、息切れが今までよりひどくなっている。言霊の力を使ってくれたのだろう。
フィリアはデウスに急いで駆け寄った。
「デウス! 大丈夫!?」
デウスは今にも死にそうなほどの息切れをおこしている。
(ごめんね、私のせいで……)
フィリアは自分を責めていた。1匹のファストキャットを仕留めたことで浮かれ、2匹目がいるなんて考えも及ばなかった。その怠慢がデウスの症状の悪化を招いた。不甲斐なさに歯を食いしばる。
「フィリア……あれが……魔獣というものか……?」
「そうよ。あれが魔獣の一種、ファストキャットよ」
「僕も……魔獣ってものを……倒してみたい。あの動きを……止めたやつを……やっつけてみても……いいかい……?」
デウスは辛いながらも魔獣というものに興味津々だった。前世には猛獣はいても魔獣なんていなかったし、デウスの記憶をたどっても魔獣なんて初めて見たからだ。
「ダメよ! 今は動かないで! すぐ倒してするから!!」
「お願いだフィリア。ナイフを貸してくれ」
しょうがないな、とため息を吐きフィリアはデウスにナイフを渡した。
「ごめんよ」
見た目は日ノ本の猫にそっくりなため、魔獣といえど罪悪感が湧き、ごめんねと口にせずにはいられなかった。
「にゃあぁっ!」
ファストキャットは悲鳴をあげて動かなくなった。するとファストキャットからふわっと白いもやもやが吹き出した。
「これって……!」
間違いない。デウスが言霊の力を使う時に出て来る白いもやもやと同じものだ。
(でもどうしてデウスが殺した魔獣から……?)
不思議に思っていると、ファストキャットから吹き出した白いもやもやはデウスの方に集まり、デウスの中に入っていった。
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