第8話 初めての戦闘
デウスが落ち着くようにずっと撫でながら微笑みかけていると、近くの木陰からカサカサと音がする。
「なに!? 誰かいるの!?」
そう叫ぶと、木陰から凄いスピードで黒い何かが飛び出し突っ込んで来た。フィリアは反射でそれを避けて、すぐに何が起こったのかを理解した。
(これは……ファストキャット!)
ファストキャットはそれほど強くは無いものの、とにかく動きが素早く一般人では全く歯が立たない。弱かろうと魔獣は魔獣である。
(私が倒さなくちゃ……!)
そばにはほとんど動けないデウスがいる。周りには私たち以外誰もいない。
(私が倒さないとデウスが危ない!)
フィリアは腹をくくった。魔法が使えるといっても練習で使った程度で生き物に使ったことはない。ましてや危険な魔獣に対してなどもってのほかだ。
「デウス。今度こそ私が守ってあげるからね。デウスは安心して横になっててね」
フィリアは髪留めを取った。するりと落ちた髪の毛が風になびいている。フィリアは緊張を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をした。そして……
「覚悟なさい!!」
フィリアはそう叫ぶと、ファストキャットに両手を向け集中した。
「生命の根源たる水の粒子よ
冷気をまといて敵を撃て
かざした手のひらに浮かぶ円形魔法陣から無数の水の粒がファストキャットに飛んでいく。速さが自慢のファストキャットも無数の粒は避けきれない。
「ニャッ!!!」
悲鳴を上げてファストキャットが倒れる。フィリアの圧倒的勝利だ。
「やったよデウス!!」
そういってフィリアがデウスの方を振り向いた、その時だった。
「止まれ!!!」
デウスの声がひびいた。デウスの声は静かな森に染みわたる。近くには、もう一匹の黒い影があった。
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