第5話 前世の記憶
「こんな古ぼけた神社にこれほどの女がいるとはなぁ。野郎ども! この女を連れてこい!」
ある日、神官として仕えていた神社に盗賊たちが押しかけてきた。そして盗賊たちは巫女の茶々に目をつけさらっていこうとしている。
もちろん神官たちも黙ってはいない。野蛮な盗賊たちを相手に抵抗している。もちろん私、千松も同様だ。
「野郎は要らねぇんだよ! 男どもは殺して構わん!!」
盗賊の頭であろう男がこう言うと部下たちは一斉に刀を抜き神官たちを切り捨て始めた。
周りの神官たちが次々と殺されていく。今の今まで笑いながら同じ飯を食って共に生きてきた仲間たちが無惨に殺されていく。この光景に千松は震え上がり、そしてどうしようも無く立ち尽くした。
「いやあぁぁ!! 助けてっ!! 誰かっ!!!」
茶々の悲鳴をあげている。しかしそれも虚しく盗賊たちは抵抗する茶々の腕を折れるくらいに強くひき、尻を押し触りながら連れていく。
(このくそ外道どもめ……)
茶々を見殺しにしながら何も出来ない自分に腹が立ち、悔しく、血が出るほどに拳を握りしめた。
「お前ら全員死んじまえ」
負け惜しみの言葉を吐き捨てた。どうにもならない。どうにも出来ない。悔しい。死んでしまいたい。茶々、どうか許してくれ……
泣きながら無力にも崩れ落ち、その場にうずくまった。すると……
「千松さん!!!」
茶々が駆け寄ってきた。
「茶々! どうしたんだ! 逃げてこれたのか!!」
「そうなの! なんでかわかんないけど突然盗賊たちが全員倒れちゃって!」
……ん? どういうことだ? 千松は混乱しつつも茶々が無事であったことを安堵し大喜びした。
すぐに千松は盗賊たちを見に行くと、全員息がなかった。なぜだ……?
「そう言えば千松。さっき盗賊に向かってお前ら全員死んじまえって言ってなかったか?」
生き残りの神官が千松に言った。
言われてみれば確かにそう言った。確かに、盗賊が倒れたのはそのときくらいだと思う。
「どういう事なの……? じゃあさっきのは千松さんが……?」
茶々が疑心と恐怖の目で千松を見た。そしてこう呟いた。
「人殺し……」
ドクン……
この時千松は、心をえぐられたような強い痛みを感じたのだった。
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