第6話 予想外の答え
自分でも何が何だかわからないまま、自分が発した言葉で盗賊を全員殺してしまったということだけが神社内で広がった。そしてついに……
「理由は何であろうと、人殺しは神に仕えるべきではない。即刻ここから出ていくがよい! 二度とこの境内に入ってはならない!」
そう神官長に言われ神社を追放されたのだった。
助けたはずの茶々や同僚から疑心と恐怖の眼差しを向けられ、神社を追放された千松は絶望し、山奥に1人で暮らすことに決めた。
言葉を発した通りの事が起きる……まるで言葉に霊力が宿っているような。そんな千松に現れた権能は人間以外にも作用した。
千松の畑の作物に『大きくなれよ』というと作物は一晩で成長し、動物に『近づくなよ』というと畑を荒らされることも無かった。こうして沢山取れた作物はほとんどを自宅の神棚への供え物と麓の寺の孤児たちに分け与え、千松自身は質素な生活を送っていた。
……はずが、ある日いつも通り作物に『大きくなれよ』と言ったら倒れて気づけばデウスとなって目覚めたわけなのだが……
デウスはフィリアの眼差しを見て、前世の茶々や神官たちからの眼差しと仕打ちを思い出した。
(どうせフィリアもあいつらと同じように僕を拒んで避けるのだろう。もうあんな思いは嫌だ……でもフィリアは何も持っていない僕についてきてくれた。……たとえここで裏切られようとも、フィリアには話しておきたい……)
デウスはフィリアの方を見た。そして決意した。これから彼女に何を言われようと、離れていこうとも……少しでも自分の味方をしようとしてくれた彼女には、その力のことを話しておくべきだと思ったからだ。デウスのその手は握りしめられ、止まらない息切れの合間を縫ってゆっくりと話し始めた。
「あの……ね、ぼくは……言葉にした……通りになるような……ね、はぁ……力がある……みたいなんだ……だから死ねって言えば……人も……殺しちゃうはず……」
……話してしまった。
(フィリアも知ってしまった以上、僕から離れていくだろう。それでいいんだ。僕のようなやつに関わるとろくな事は無いだろうから)
そう何度も自分に言い聞かせた。堪えている涙は決壊寸前だ。
「そうなのね……なるほど、理解したわ。だからさっきのウーヌスとデュオは私に触れられずに突然倒れたのね」
フィリアの次の言葉を聞くのが怖い。なんて言われるだろう。「怖い!」「近寄らないで!」「バケモノ!」他には……
「ありがとう。私を……助けてくれて」
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