教室→女子4人


「また今日も蒼の家に行くのか? 奴の晩飯を作ってやりに?」


「うん! 学校終わったら買い物に行くから、今日は付き合えないってことでよろしく~!」


「それは別に構わんが……大丈夫なのか? 祖父がいるとはいえ、夜遅くまで男の家で過ごすだなんて……」


 一方その頃、空き教室では数名の女子たちがお喋りに花を咲かせていた。


 その内の1人はやよいであり、彼女は自作のお弁当をパクパクと食べながら楽し気に友人と話し続けている。

 そんな彼女に渋い表情を向けているやよいにも負けていないスタイル抜群の美少女の言葉に、これまた可愛らしい少女がくすくすと笑ってから口を開く。


「大丈夫だよ、栞桜しおちゃん。蒼くんなら、間違いはないって」


「まあ、それはわかっているが……奴が心変わりをして、やよいを手籠めにしないとも限らないし……」


「それはそれで、いいじゃない。中途半端な関係が終わりを迎えて、恋人同士になるのなら、万々歳」


涼音すずね、お前はなぁ……!!」


 そう、起伏のない声で割と大胆な意見を述べたのは、銀色の髪が特徴的の少女だ。

 4人で机を囲み、それぞれの弁当を食べながら、学園でも指折りの美少女たちは各々の意見を口にし続ける。


「そういう、体の関係から始まる恋愛関係など不健全だろうが! まずは友人から関係をスタートし、お互いの理解を深め合っていくというのが、正しい恋人関係であるはずだ!」


 若干というか、かなり古風な意見を述べる少女の名前は西園寺栞桜。

 苗字は同じだが、やよいとは血縁関係はない。同じ養母の下に引き取られた、彼女の親友である。


「あなた、恋愛に関する価値観が化石並みよ? なんでもかんでもとは言わないけど、お互いに想い合っているのならば、ノリに身を任せるのもあり。それが現代の恋愛というものだと思うのだけれど」


 そんな栞桜と真逆の考えを口にした銀髪美女の名前は鬼灯涼音ほおずき すずね

 クールなようでいて割とお茶目な不思議ちゃんであり、彼女もまたやよいとは親友だ。


「う~ん、どっちの意見も両極端な気がするけどさ……やよいちゃんと蒼くんならいいんじゃない? もう10年以上の付き合いだし、ご両親も公認なんでしょう? なら、しっかりと告白して恋人になれば、その日の内にベッドインっていうのも許されるとは思うけどなぁ」


 そして最後、年頃の少女らしい普通の意見を述べた彼女の名前は椿こころ。

 やよいを含めてキャラの濃い面子が揃うこのグループにおいて、バランサーの役割を担う常識人である。


「即日床を共にするのは論外だろう! やはり何度かデートを重ねて、数か月の期間を設けてだな……」


「だから、そういうのは古い。それに蒼とやよいは既に10年は一緒に過ごしてるんだから、デートとか数か月の期間を設けるだとか、今更でしょ」


「まあまあ、2人とも落ち着いて……私たちがここで言い争っても、意味なんてないって」


 段々とヒートアップしていく話し合いを制したこころは、仲の良い友人たちのやり取りをニコニコと笑いながら見守っている。

 彼女の仲裁で一旦意見のぶつけ合いを止めた涼音は、ここで新たな意見を取り入れるべく、背後を振り返るとそこにいる人物へと質問を投げかけた。


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