ランニング→イチャつき
「おっ、時間に遅れずよく来たね~! おかわりの1発まであと数分だったんだけどにゃ~!」
「僕が待ち合わせの時間に遅れたことなんてないでしょ? ほら、準備運動始めるよ」
「はいは~い! わかってますって!」
それから15分後、着替えをはじめとした支度を終えた蒼は、家を出てすぐのところで同じく運動着に着替えたやよいと合流し、いつも通りにジョギング前の準備運動を行っていた。
朝の心地良い空気を吸い込みながら、少し前のどたばたを頭の中から追い出すようにして屈伸を行う彼であったが、それを邪魔するかのように目の前の幼馴染が派手に体を動き回らせる。
「おいっちにーさんし、ごーろくしちはち、っと!!」
「ぶふっ……!?」
自分のすぐ近くで上下する、スパッツに包まれた丸いお尻を目にした蒼がその光景に思わず噴き出す。
これまでの人生で何度も感じたことのあるその柔らかさを思い返してしまった彼は、大きく咳払いをすると幼馴染へと注意を行った。
「……何度も言ってないっけ? 準備運動をする時、もう少し離れてくれって」
「言われてるね。でも、困ることなんてないでしょ? ぶつからないように距離も取ってるしさ~」
「ぬぐぅ……!!」
その反応を待っていたかのように反転し、蒼と向き合ったやよいは、準備運動の続きとばかりに小刻みにジャンプをし始めた。
彼女の小さな体が飛び跳ねる度に、その小柄な体躯に見合わない大きな胸が上下し、その光景もまた蒼に多大なる羞恥を味わわせているようだ。
「んっふっふ~! どこ見てるのかにゃ~?」
「ぐっ……!?」
「あははははは! 本当に正直者だよね、蒼くんって! そんなに見たいなら、もっとサービスしてあげよっか?」
「結構です! ほら、もう準備運動は十分でしょ!? さっさと走るよ!」
「は~い! ……でも、本当によかったの? 折角のチャンスを棒に振るような真似――」
「お喋りするなら置いていくから! もうそろそろ黙って!!」
上目遣いで艶めかしい雰囲気を醸し出しながら、着ているジャージのジッパーを降ろそうとしたやよいの姿を目にした蒼は、大慌てでその行動を制すると共に話を切り替えた。
確かに無遠慮に彼女の揺れる胸を見ていた自分も悪いが、敢えて強調して視線を惹こうとした彼女にも問題があるだろうと自己弁護しながら、結局はその目論見のままに動いてしまっている自分自身を腹立たしく思った彼は、目が覚めてから30分も経っていないというのに既に数え切れないほどに吐いている溜息の回数をもう1回増やしてから、追い付いてきたやよいの姿を見やる。
身長148cm。体重は秘密。年齢は自分と同じ17歳だが、とてもそうとは思えない小柄な体格と可愛らしい童顔が特徴的な幼馴染は、今日もツーサイドアップに纏めたややオレンジがかった髪を揺らしながら自分と並走している。
180cmを超える長身の蒼と並ぶとその体格差はより際立って見えて、元々が小学生としか見えないやよいの小柄さが引き立っていた。
身長が違えば脚の長さも違うし、脚の長さが違えば歩幅も違う。
蒼が1歩進む距離をやよいは3歩足を動かさなければ進むことは出来ないし、このランニングで自分と並走するためにやよいが思っている以上に頑張っていることは、蒼だって理解していた。
別に自分に付き合う必要もないし、彼女が頑張る理由もないはずなのだが……こうして、誰かと一緒に走れるというのは、1人で同じことをするよりも大分心が軽くなるものだ。
話相手が出来るし、誰かと一緒だからサボる気にもならないし、気心の知れた相手だとそういった利点がより強化されるような気がしている。
……それに何より、眼福だという単純明快な理由も存在していた。
小柄な体格をしているやよいだが、その胸と尻は同年代の少女たちの中でも類を見ない大きさを誇っている。
所謂、ロリ巨乳というやつである彼女が運動を行えば、女性らしい丸みを持つそこが蒼の理性を揺るがすようにしてぽいんぽいんと動き回るのだ。
ジョギングをしている今も、ジャージに隠れているやよいの胸は小刻みに上下しているし、スパッツを履いている下半身もその形をはっきりと彼の目に捉えさせている。
身長は小学生になった頃からほとんど変わっていないが、こういった部分だけは思いっきり成長しているなと、自分を惑わせるやよいの女性らしい部分を目の当たりにした蒼は、その光景にごくりと息と涎を飲み込んだ。
まったく、本当に無防備な幼馴染だ。食べ頃の美味そうな体をなんの迷いもなく押し付けて、男の欲を刺激させられる度に、何度襲ってしまおうかと考えたことだろう。
いっそ、次に部屋に侵入された時には返り討ちにしてしまおうか? 自分のことを舐めている幼馴染に、からかっている相手が男だということを教え込み、わからせてやる必要がありそうだ。
「ぐへへへへ……! そうと決まれば報復の計画を立てなければ。次にお尻をど~んされたら、思いっきり鷲掴みにした後でパジャマをパンツごと脱がし、そのままあ~んなことやこ~んなことをして、R18的な展開に持っていって――」
「……勝手に人の心の声にアテレコしないでもらえる? っていうか、僕はそんなこと考えてないからね!?」
「うん! 知ってる! 蒼くんはあたしに手出し出来るような思い切りのいい性格してないもんね!」
「それ、遠回しに僕のことを馬鹿にしてないかい?」
「そんなことないよ。蒼くんが誠実で思慮深い、優しい性格をしたヘタレだって言ってるだけだって!」
「やっぱり馬鹿にしてるじゃないか!」
「まあまあ、こんな朝っぱらからそんな風に叫んだらご近所迷惑になっちゃうよ? 大声出せる余裕があるんだったら、もう少しペースを早くしてもいいよね?」
「あっ、ちょっ!?」
いたずらっぽく笑ったやよいが、ぐんっと走る速度を上げて蒼の前に出る。
急なペースアップに驚く彼へと振り返った彼女は、スパッツに包まれたお尻をぺんぺんと叩くと、舌をぺろりと出して色んな意味で蒼を挑発するようにして言った。
「鬼さんこちら、お尻の鳴る方へ! ……まさか、追い付けないなんてことはないよね?」
「……言ったね? すぐに捕まえてあげるから、せいぜい必死に逃げてみな!!」
「きゃー! 蒼くんが怒った~! 捕まったら食べられちゃう~! 誰か大人の人呼んで~!」
「そういう人聞きの悪いことは言わないの、っと!!」
誰かに聞かれたら大いなる誤解を招きそうな言葉を口にするやよいに注意した後、自身も彼女に倣って速度を上げる蒼。
短距離走のようにフルスロットルになるのではなく、最後までコースを走り切れる余裕を持った上で先行するやよいに追い付けるようなペース配分を考えた上で走りを速めた蒼は、呼吸を整えながら彼女の小さな背中を追い始めた。
(丁度、物足りなく思ってたところだ。やよいちゃんが前に出てくれて助かった)
体が運動に慣れて、少しペースを速めたいと思っていたところで前に出たやよいの後ろ姿を見つめながら、恐らく彼女は自分のそういった気持ちに気が付いてあんなことをしたのだろうと蒼は考える。
お喋りをしながら緩く走るのも悪くはないが、しっかりと汗を流すことが目的であるこのランニングを有意義なものとするために動いてくれている幼馴染に感謝した彼は、色んな意味でやよいは自分のことをよく理解しているなと思った。
「公園までに追い付けなかったら飲み物奢ってもらうからね! その代わり、追い付けたらあたしのことを好きにしていいよっ!」
「結構です! ふざける余裕があるのなら、もう少し本気を出して走ってもらえるかな!?」
「あ~、言ったな~!! そんじゃ、蒼くんが絶対追い付けないくらいに速く走ってやるから!」
静かさとは無縁のやり取りを繰り返し、仲のいい幼馴染というよりかはカップルのような会話を繰り広げる蒼とやよいの2人は、涼やかな朝の空気を切り裂いて、ランニングの中間地点である公園に向けて競争を続けていくのであった。
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