3.道
「リリー、待ってよ!」
大して水が入っていない桶を運ぶリリーは、根が突き出たでこぼこ道を軽快に歩いていく。
一方のランバーは、せっかく汲んだ水を零さないように歩いていた。
「将来のために鍛えてるんじゃないの〜?水桶の一つや二つぐらい持って追い越してよ」
ランバーより少しだけ前に行っては、追いつくまで待っていてくれる。
リリーの後ろには、この国を守る神樹の幹が視界いっぱいに広がる。その幹のさらに上、首を少し仰け反らせると神樹の葉が見えた。
「お〜い。早くーー!」
神樹からリリーに目線を戻す。
リリーはいたずらを待ちわびる子どものように笑って、いつも落ち合う道に入っていった。
ランバーの家の前には、神樹の根元まで続く道が広がっている。大人が十人ほど並べる道には神樹の細かな根が出ていて、綺麗に慣らされている道とは程遠い。
ここからずっと東に下がった国には、水のように透きとおり、窪みを見つけることすらできないほど美しい道が通っているという。
しかしこの国には綺麗な道はない。ランバーが今いる道が一番ましだった。
この道は住民の生活道路にもなっているから、人々の足で踏み固められている。つまずくこともほとんどない。
むしろ、気をつけるのはリリーが入っていった道だ。大きめの道と違って壁は固められていないし、根の成長によって突然現れたり無くなったりする。
住民も全く使わない。使うのはランバーたちのような子どもが隠れ家として使うぐらいだった。
ランバーはリリーを追って、薄暗いその道に入っていった。
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