2.水汲み場
途中で根に足を取られそうになりながら、道を下って行く。
水飲み場にはすでに、朝の支度に使うための水を求めにやってきた住人たちで混雑していた。
いくつかあるうちの水飲み場から一つを選んで桶を差し入れる。
水は薄氷が張っていそうなほど冷えていた。
ランバーの手も冷たい。家で身体の奥まで温まっていたはずなのに、すでに温もりは逃げ出していた。
「今日、すっごく寒いよね」
声をかけてきた人物はランバーのすぐ隣にいた。薄汚れたマフラーを口元まで上げ、同じく汚れた帽子を目深に被り、その中に髪を全て隠してしまっている。
ランバーにしか聞こえない声で話しかける。
「リ、リリーじゃないか!なんでこんなところにいるんだよ?」
リ、の発音こそ大きくなってしまったが、すぐに少女にしか聞こえない声で話す。
その姿を見て、少女の目が弧を描く。目元しか見えないのでおそらく笑ったのだろう。
「ランバーが朝の水汲みは辛くて辛くてたまらないって言うもんだから、私も手伝ってあげようと思って」
来ちゃったのよ、とリリーは言った。
リリーは桶を持ち上げ、ランバーを見た。
行きましょう?と目が語っている。ランバーもここでリリーの正体に気づかれるわけにはいかないので、足早に水汲み場を去ることにした。
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