第58話

「はぁー、疲れた。なんだ?俺はまだ行かなきゃいけないのか?もうよくないか?十分頑張っただろう?」

「駄目だよ?一緒に来て当然じゃないか。僕だけであの三人が待っている家になんて帰えれるわけがないだろう?僕を見捨てるなんて死んでも許さないよ?末代まで祟るよ?」

「帰れよ。お前の女だろう?」

「いや、あんな女要らない。普通の女の子がいい」

 僕達はぐだぐだ喋りながら歩く。

 僕達は亀のような速度で歩く。

 僕達は学校で気絶していた生徒たちを起こして事態の収集に努めた。

 まぁ事態の収集に努めたとか言っても大したことではないのだが。

 もうクラスのみんなも、学校も、彼女たちに気絶させられることに慣れてしまった。

 悲しいことに。

 本当に悲しいことに。

「ひっどい事言うなー」

「まぁ、それが真実だし。あんなおっかないの嫌だよ?殺意マシマシだしよ?」

「えー、でもお前完璧なくらいに御してたじゃん。おっかないあの人相手に説教して完全に圧倒していたじゃんか」

「……お前。あの時起きてたの?」

 確か僕が戦闘用意識のときに無双していた時は春来は気絶していたはずだ。

「……まぁ……うん。起きてた」

「なんでだよ。起きてたのなら加勢しろよ」

「いや、必要じゃないくらい無双していたけど」

「まぁ、あの時は別よ。一応戦争に出て人を殺す用の意識だから。それは格が違うよ」

 もう戦闘用意識ではなく、日常用意識に戻っちゃっている。

 以前のような無双は到底出来ない。

 どんなに頑張っても無理だ。

 あの三人に勝てるビジョンがわかない。残念なことに。

「……なるほどね」

「うん。そういうこと」

 そんなこんな話をしていると、僕の家へと辿り着いてしまった。

 僕と春来はまるで死刑台に登る死刑囚のような気持ちで階段を一歩一歩進んでいった。

 そして、たどり着いた。辿り着いてしまった。

 自分の家に……。

 なんで僕は自分の家に帰るのにこんなにも憂鬱にならなくてはいけないんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る