第56話

 僕の意識はガラリと変わる。

 日常用の意識から戦闘用の意識へと。

 ……ちょっと待って?

 戦闘用の意識に切り替わっちゃんだけど?

 僕は普段は日常用の意識で行動している。

 それだけで十分だからだ。

 ただ、紛争地域に赴いたときなんかに戦闘用の意識に切り替える必要がある。

 相手の位置を、殺意を察知し、相手を殺すことに意識の大部分を割いているのだ。

 のだが……滅多に切り替わることはない……ないのだ。

 ……切り替わったのだが?

 ここは戦地か?凄腕の暗殺者でもいるのか?ここには?

「瑠夏?」

 そんなことない。

 僕の目の前にいるのは3人の美少女。

 ……。

 ………。

 ふむ。君たち僕に殺気ぶつけていない?

 今まで会ってきたどんな相手よりも強く、濃密な殺気を放っているよ?

 君たちじゃなければ僕は条件反射で殺しているよ?

「そこの雌豚と一緒に泊まったの?」

 美玲が顎で和葉をさす。

 はしたないよ?

「えぇ」

 僕は肯定する。

「なんで!」

 美玲が僕を強く睨む。

「休み中に何しようが僕の自由だと思うんだけど?」

 別に休暇中に僕が何をしていようが自由のはずだ。

「自由なわけないよ!家族には監督せき」

 神奈が僕の方へと飛びかかってくる。

 僕はそんな神奈の頭を掴む。

「なんでお前はここにいる?」

 神奈と視線を合わせて問う。

「それは私が呼んだからよ」

 僕の質問は神奈の代わりに美玲が答える。

「美玲が?この学校に部外者は連れてきちゃいけないルールのはずだが?」

 いくら美玲でも学校のルールを破らせるわけにはいかない。

「美玲。お嬢様は西園寺家の娘なの。その名に恥じないような振る舞いを心得てください」

「なっ……!」

 僕のはっきりとした言葉に美玲は

「いいですね?」

「でもでもでも!」

「いいですね?」

 僕は美玲を静かに見つめる。

「……はい」

「美玲。周りを見て?」

「……」

 美玲はうつむき、何も喋らない。

「周りを見て?」

「……みんな……気絶している」

「それはなんで?」

「……私たちが怖がらせたから……」

「そうだね?」

「うん。……ごめんなさい」

「謝るべきは僕じゃない。みんなにだよ」

「……うん」

「明日。みんなに謝ろうね?」

「……うん」

 美玲は素直に僕の言葉に頷いた。

「ごっぽぉ!」

 僕は春来を蹴り起こす。

「けほっ。けほっ」

「じゃあ僕と春来でみんなを起こすから三人は先に僕の部屋に言ってて。何か言いたいことがあるならそこで聞くね」

「え?」

「いいね?」

 僕は有無を言わさない。

「神奈。二人をしっかりと護衛しろよ。我が一族の名にかけて」

「うん!わかった!」

 神奈は嬉しそうな言葉で頷いた。

 なんで?あいつは嬉しそうなんだ?反省しているのか?

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