第54話

「なぁ、お前が解雇されたってマジなのか?」

「マジじゃないよ?」

「え!?嘘だろ!?和葉から辞めたって聞いたぞ。和葉からお前が寝ている姿の写真が送られてきたから……ほんとなのかと……」

 ……和葉……あいつ……。

「ただ美玲から長期休暇をもらっただけだよ。高校卒業するまではフリーになったけどね」

「お!?高校卒業するまでか。それはかなり長いな……」

「……そうだね……」

 僕と春来は授業中いつもの階段でたむろしていた。

 ちなみにだが、この場に美玲も美奈もいない。

 そして当然和葉なんかもいない。

 ここにいるのは二人だけだ。

「いやー、慣れるのに時間かかるだろうなー」

「……だろうね。僕の人生は今まで全て美玲中心に回ってきたから……。いきなり人生の全てとも言えるものがなくなっちゃったんだもん。そりゃ混乱するよ」

「だよな。いや、ちょっと待て?他人が自分の全てって結構酷くないか?」

「そう?当然じゃない?」

「いや……当然ではないだろ。親が自分の子供が全てだとか、老人が自分の孫が全てだとかならわかるが……10代の若者がそれはないだろ」

「えぇーそう?なんかそこら辺のカップルとかもお前が全てとか言っているじゃん」

「は?あんなん嘘に決まっているだろ。でまかせだ。でまかさ。どうせすぐに今日見失って別の異性に目移りして別れるんだよ」

「ふーん。そういうもんなん?」

「そういうもんだぜ」

 僕達はダラダラゲームしながら雑談に花を咲かす。

「まぁこれでお前はようやく普通の高校生になったんだな……」

「いや、普通ではないと思うよ?」

「……まぁうん。確かにそうかもしれないけど、一応立場は普通の高校生だし」

「あ、一応僕投資とかもやっているから普通に投資家って名乗っていいくらいの額稼いでいる」

「いや……お前何なん?まじで何なん?」

「西園寺家に仕える執事」

「執事ヤバすぎだ!」

「ふっ。これくらいは執事の嗜みよ」

「そんな執事いてたまるか!」

「……お前、執事首になっても全然問題ないのな」

「いやー、さすがに職業投資家は嫌だな。単純に投資とか作業ゲーだからつまらない。仕事にするなら何か別のものがいいな」

「あー。なるなる。瑠夏の仕事か……。すごいな。見事なほどに何も思い浮かばない。お前が執事じゃなかったとしたら、どんな職業に就きたい?」

「あー……カフェ開きたいな。料理関係は完璧だし、いけるでしょ」

「あー、たしかにお前似合いそうだな!」

「春来はなにしたい?」

「あー、俺は実家の本屋継ぐよ」

「まぁそうか」

 僕と春来は珍しく自分の将来について少し真面目な話題で盛り上がった。

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