第53話
「あなた……どれだけ勉強するのよ」
勉強が一区切りした頃。
自分の近くから和葉の声が聞こえてくる。
あぁ、そういえばいるんだったな。
僕は顔を上げ、和葉のことを見る。
「あ!やっと気づいてくれた。私を無視しないでよね?私ここ何時間も瑠夏にひたすら声をかけ続けるやばいやつになっていたんだからね?」
「なら声をかけるな。そしてそのまま家に帰れ」
「嫌よ!帰るなんてありえないし!私が瑠夏に声をかけないなんてのもありえないわ!」
「はぁー」
深々と僕はため息を漏らす。
「それにしても、瑠夏めちゃくちゃ勉強しているのね……」
「うん。まぁ」
「いつもこれくらいしているの?」
「うん。しているね」
僕のような凡人が常に好成績をとるためには勉強を欠かす事ができない。
それに僕は西園寺家の人間として様々なことを学ばなくてはならない。
英語は勿論。
イギリス語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、中国語、韓国語、インド語、ブラジル語etc……。
西園寺家の人間ならば最低30カ国後は話せるようになってなくてはいけない。
なのに僕が喋れるのはまだ27カ国だけ。まだまだ。
その他にも様々な技能の勉強もしなくてはいけない。
今は弁護士資格を得るために勉強中である。
「ちょっと待って?」
「ん?」
「毎日これくらい勉強しているの?」
「うん」
「……普段はあの女の執事として働いているのよね?」
「うん。あと、美玲のことをあの女って呼ばないで」
「そんなことはどうでもいい!」
どうでもよくないよ!?
一番大事だよ!
「あの女の執事として動いている時は当然勉強なんかしていないわよね?」
「うん。当たり前じゃないか。例え美玲が勉強しているときであっても僕がその隣で一緒に勉強するなんてことはないよ」
「……あなたは毎日どれくらい寝ているの?」
「うーん。……ほとんど寝ていないかな?週4は徹夜で、週3くらいに毎日1、2時間寝るぐらい?」
「ふぁ、ふぁ、ふぁ。眠くないの?」
「眠いよ?だからいつも学校で寝ているんだよ?」
僕は学校ではそこまで真面目なキャラというわけではない。学園内なら授業中に寝ていても許される。
「今すぐに寝なさい!休息が!瑠夏には休息が必要よ!」
「いや、まだ勉強の続きもあるし。それに毎日のトレーニングも」
「まだ勉強するの!?あとトレーニングって何!?そんなのいいから寝なさい!」
「なんでよ!必要なことでしょうが!」
「駄目よ!休息こそが必要よ!あの女だってそれを望んでいるはずよ!」
どんどん!
「「あ、ごめんなさい」」
隣の住人に壁が思い切り叩かれ、僕達は謝り、黙った。
そうだった。
ここの壁はそんなに厚くない。
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