第52話
「なぁ。お前さ。ずっと僕の家にいるの辞めない?」
僕は平然と当たり前のように僕の家に居候している和葉に声をかける。
「なんでよ。別にいいじゃない」
「いや、何も良くないだろ。普通に不法侵入、不法占拠だろ」
「えー、ちゃんと許可はもらってるー」
僕が寝ている布団にさも当たり前のように寝転がりながら戯言を吐く和葉。
ふむ。
こいつをどうしてやろうか?
僕は手に持つ包丁を和葉に向ける。
「そんなの向けられたって怖くはないわよ。立場を考えればあなたは私に何もできないからね」
「……」
和葉の言うとおりだった。
僕が和葉に対して出来ることは存在しない。
僕と和葉では立場に違いがありすぎた。
ただの西園寺家の一使用人でしかない僕が由緒正しき四宮家の長女。
立場の格差が半端じゃない。
ここで僕がなにかしたときに西園寺家にかける負担は尋常じゃないだろう。
故に僕は力づくで和葉を家から追い出さないし、ちゃんともてなしてあげないといけない。
「はぁー」
なので僕は深々とため息をつくことしか出来ない。
和葉を家から追い出すのは諦め、再度キッチンに向き直し夜ご飯作りを再開する。
「せめて、何かしてくれればいいんだけど……」
僕はボソリと呟く。
和葉は僕の家に居候しているくせに家事などを手伝ったりはしない。
まぁ手伝われても邪魔なだけなのだが。
「……ごめん。私、家事とか全然やったことないから……」
流石の和葉も全て何から何まで全部僕に任せっきりという現実は申し訳なかったみたいで愁傷な様子で頭を下げる。
嘆き悲しみたいのはこちらだよ?
「で、でもほら!私は遊びの天才だから!」
……遊びの天才?
「どうせ休みでも何もすることない瑠夏の休みに彩りを加えられるよ!」
「要らないよ。別に。ほら出来たよ」
僕は完成した夜ご飯を持っていく。
「「いただきます」」
僕達は夜ご飯を食べ始める。
「うん!美味しい!」
「それはよかった」
「それでよ!人間娯楽会ってのものだと思うの。人間を人間たらしめているのは心!心が死んでいたらもうそいつは死んでいるのと同義なのよ!心にやすらぎを与えるのは娯楽!読書、スポーツ、テレビ、映画、ゲーム、動画。それら娯楽に触れ、自分の好きなものに触れ、生きる。それでこそようやく人間なのよ!さぁ!遊ぶわよ!」
「要らないよ。僕は。そんなことより勉強するから」
僕は和葉を無視して手早く食事を済ませる。
食器を片付けてから勉強道具を取り出し、自分の世界に閉じこもった。
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