第51話

「どういうこと?美玲」

 僕は美玲の言ったことが理解できず、聞き返す。

「私に二度も言わせるつもり?あなたに長期休暇を与えるは。期限は高校を卒業するまで。高校を卒業するまであなたは私の執事ではないわ」

「……なぜ?僕が気に食わないのであれば、解雇していただき別の執事をおつけするけど……?」

「いいえ、あなたには何の不満もないわ」

「なら、なぜ?」

 僕は首を傾げる。美玲が僕に長期休暇を与える理由が皆目検討も付かなかった。

「……私はただ。あなたと関わりたいだけどよ」

「関わりたい?もう十二分に関わっていると思うけど……これ以上関わるのは流石に厳しんじゃないのかな?」

「違うわ……決定的に違うのよ」

「何が?」

「執事であるあなたと執事じゃないときのあなたは」

 ……執事である僕と執事じゃない僕?

 何が……?何を言っているだろうか?

「私は西園寺家に仕える蛇蠍 瑠夏。ではなく、ただの高校生瑠夏と関わりたいの」

「……?」

 わからない。

 わからない。

 わからない。

 ただの高校生瑠夏?そんなものはいない。いない。いない。

 僕は西園寺家に仕える蛇蠍 瑠夏だ。高校生瑠夏の姿なんていない。

 僕の西園寺家に仕える……仕える……仕える。

 ……。

 ………。

 わからない。

「何も考えなくていい。あなたは私の言うとおりに動けばいい。……駄目ね。私はあなたの主人じゃなくて対等な存在になりたいのに……上から目線になってしまうわ」

「それが当然だ。当たり前だ。気にすることはない」

「そうね……じゃあ最後の命令よ。あなたは私の同級生として対等の存在として私を扱いなさい。今日から高校卒業まであなたに長期休暇を与えるわ。しっかりと休んで頂戴」

「僕が外れた後、誰が美玲のお世話を?」

「あぁ、そこは心配しなくていいわ。もうすでに許可はもらっているから。あなたの妹である神奈ちゃんにお願いしてあるわ」

「なっ……神奈が!」

「えぇそうよ。何か問題があるのかしら?」

「いや、特にない……」

 ……神奈が?

 あいつが何を考えているのか、僕にはわからない。

 それ故に不気味さを感じる。

 僕を美玲の執事じゃなくすることで神奈は何を得られるというのだ?

 ……その前に神奈が美玲の使用人として十分な働きができるのだろうか?

 

 あいつは欠陥品なのだから。

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