第50話

「それで?何の用?神奈」

 僕は和葉が帰った後、神奈に尋ねる。

 神奈が変なふうに和葉を煽るせいで帰ってもらうのに酷く時間がかかった。

 全く神奈は何を考えているのかわかりにくいし、やりにくい。僕の一族じゃないみたいだ。

「えー、大好きなお兄ちゃんに会いたいという理由で会いにきちゃいけないの?」

「当たり前だ」

 僕は断言する。

「僕達は西園寺家に仕える一族、蛇蠍の一族だ。僕達の行動一つ一つの重さを知れ」

「……っ」

 僕の至極当たり前の答えに神奈は顔を歪ませる。

「……神奈」

「……わかっているわ。ただ少し……」

「ただ少し、何?」

「……なんでもないわ。それに私だって馬鹿じゃないわ。大好きなお兄ちゃんに会いに来るのに建前の一つや二つくらい作ってくるわ」

「……何?」

 建前。

 神奈のその言葉に引っかかるも、聞かなかったことにしてはなしを続ける。

「お家からの連絡よ。厄介なものが家の中に入ってきたらしいの。そこで一番の強さを持つお兄ちゃんに解決するように命令が下ったのよ」

「厄介なもの?なんだ?それ」

「そこまでは私も知らないわ。でも、多分呪物だと思うわ。呪怪の気配も、呪われている人の気配も感じなかったし。あくまで私の感知能力の中でだけど」

 神奈だって僕達の一族の人間だ。

 呪い関連であれば無類の力を発揮するだろう。

 神奈の感知能力に引っかからなかったのであればそうなのであろう。

 もし神奈の感知納涼をかいくぐったのであればそれは……想像以上の脅威であろう。

「私からの伝言はこれだけ」

「そうか。ありがと。助かったよ。それで?僕はいつ頃向かえば良いんだい?」

「まだいいらしいわ。上が何を考えているかはわからないけど、然るべきタイミングで命令が下されるらしいわ」

「了解」

「さて!それじゃあ妹である私がお兄ちゃんのために手料理を振る舞ってあげるよ!」

「いや、僕が作るよ。神奈もここまで来て疲れただろう?神奈の手料理は明日食べさせてもらうよ。今日は兄である僕が作るよ。兄の威厳と壁の高さを見せてあげるよ」

「……っ!うん!待って。私も手伝う。一緒にやろ?もう十分にお兄ちゃんがすほいってことは知っているから!威厳も壁の高さももう十分!そんなことよりいっしょにやりたいな」

「ん。わかった。一緒にやろうか」

 僕と神奈は一緒にキッチンに向かった。

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