第49話
「は、はぁ?」
和葉ははっきりと困惑の表情を、そして、圧倒的な怒りを見せる。
……やばいかも知れない。
「待って」
僕はそう判断し、一触即発状態の二人の間に入る。
「ここではまずいから、とりあえず別のところに行こ?ホテルとかね」
西園寺家の邸宅を勝手に使うわけにもいかないし、僕の家も壁が薄い。
ホテルが一番適しているだろう。
「はぁ!私との」
「いいよ。もう。また今度ね」
「……わかったわ。また、今度行ってくれるのよね?」
「うん。勿論」
「それなら、いいわ」
「じゃあ、とりあえずホテルに行こうか?神奈もそれでいいよね?」
「……わかった」
僕は神奈と和葉と一緒にホテルに向かった。
向かったホテルは四宮家御用達のホテルだ。
僕と神奈は西園寺家にとって重要な人材ではあるが、所詮は使用人。西園寺家御用達のホテルを勝手に使うわけには行かない。
なので、四宮家のだ。
ホテルマンが僕と神奈を見て驚いていたけど。
■■■■■
「それで!一体どういうことなの!?」
ホテルに着くと同時に和葉が叫ぶ。
「その言葉通りの意味だよ。私とお兄ちゃんは生まれたときから子供を作ることが決められているのよ!」
神奈が自信満々に話す。
「そ、それはどういう……」
和葉は不安そうな瞳で僕の方を見る。
その瞳には否定してほしいという願いが込められていることがはっきりと見て取れた。
「本当のことだよ。僕の一族は特殊でね。外の血を入れたくないんだ。というか知らなかったの?そこそこ有名だと思うけど……」
僕の一族の話はかなり有名である。
日本で唯一近親相姦を認められている一族なのだ。そんな情報くらい四宮家の人間である和葉なら知っていると思ったよ。
知ってなおラブコールしているのかと……。
「そ、そんな……」
和葉が愕然とする。
「じゃ、じゃあ……」
「ふふん!さぁ!お兄ちゃんのことなんか諦めるといいよ!」
気落ちする和葉を煽るような言葉を口にする。
「な!……ありえないわ!このまま引き下がるなんて!認めない認めない認めない認めない認めない。瑠夏は私の私だけのもの。あなたのような女に渡さない。渡すことなどありえない」
ドロリとした感情が和葉から漏れ出す。
それは、神奈にも見えただろう。
「そっか。……じゃあ、いいよ。落とせるものなら落としてみてよ。ふふふ、落とせるものならね?」
「落とせるに決まっているじゃない!見てなさいよ!」
またしても神奈が和葉を煽るようなことを話す。
はぁー、面倒なことを。
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