第45話
美玲の甘い香りが僕の鼻腔を撫で、驚くほど柔らかな感覚が唇に植え付けられる。
ゆっくりと美玲が離れていく。
美玲の頬は真っ赤に染まっていた。
後には、暖かな感覚が僕の唇に残った。
……。
…………。
……………。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ん!?
僕の思考が停止する。
は?今、僕は何をされた?美玲と何をした?お嬢様と何をした?西園寺家の一族と何をした?
思考がまとまらない。
絞首からの窒息。
高所からの飛び降り。
その他のガス及び蒸気による中毒及び曝露。
溺死及び溺水。
移動中の物体の前への飛び込み又は横断。
鋭利な物体。
煙、火及び火炎。
農薬による中毒。
ライフル、散弾銃及び大型銃器の発射。
アルコールによる中毒。
拳銃の発射。
モーター車両の衝突。
鈍器。
やけに具体的で義務的な自殺方法が僕の頭を巡る。
なんで?なんで?なんで?
何をされた?
「瑠夏?」
「ふぇ?は、え、あ?」
美玲の怪訝そうな声でようやく僕の心が浮上してくる。
「大丈夫なの?」
「え、あ、うん」
あー。
あー。
あー。
僕の荒れに荒れていた心が段々と冷静になってくる。
すっと消えていく。
感情が。激情が。熱量が。
「そ、それで、その……」
「ふふふ」
僕は見たことないくらいにしどろもどろになる美玲を
「いきなりどうしたの?練習相手が欲しかったの?異性への興味があったり、付き合ったときのために練習したい場合言ってくれればプロの人をお招きするから言ってね?」
「え?」
「ん?どうしたの?」
僕は呆然とした表情で僕のことを見てくる美玲に首を傾げる。
なんでそんな顔をするのだろうか?
これが当たり前だろう?当たり前でなければならないだろう?
「あ、もうすぐ終わりだね。……降りようか?」
「……え、あ。……うん」
僕は美玲に手を差し伸べ、一緒に降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます