第35話

「おはようございます。昨晩はよく眠ることが出来ましたか?」

「……えぇ。おかげさまでね」

 ふむ。

 何故かその言葉に棘が含まれている気がするのは僕だけだろうが?

 それになんか元気を感じられない。

「それはよかったです。それでは約束の場所に向かいましょうか」

「ねぇ。このまま二人で行かないかしら?」

「いえ、そういうわけにはいきませんよ」

 何を言っているのだ。

 理由はよくわからないが、やけに意気消沈していて疲れている美玲と一緒に待ち合わせ場所に向かった。

 

 待ち合わせ場所にはまだ誰も来ていなかった。

 まぁ、当然だよね。

 一応1時間前にいるのだから。

 ……なんか感覚が麻痺っているけど、約束の1時間前からいるって結構酷いけどね。

 約束の1時間前から待ち合わせ場所で待っているとか普通はありえない。

 あ、ありえない、よね?

 

 約束の15分前にはかわいくも、露出の少ない真面目そうな服を着た美奈が、

「あっぶねー!ギリギリセーフ!ごめん。待たせた?」

 約束の時間ぴったりに春来がやってきた。

「あなたのような愚物が私を待たせるなんて恥を知りなさい。せめても約束の時間の10時間前には待っていることね」

「そんな!?ひどくない?遅れてないよ!?あと、10時間前はやばすぎるから!」

「本来なら更に前から来るべきよ」

「誰が来るんだよそんな前から!?」

 ……リアルにこの人10時間以上待とうとしていたんだけどね。

 美玲にはやっぱり一般常識を身に着けてほしい。

 割と本当に切実に。

 実に耳が痛い。

「10時間前は流石に言いすぎだけど、15分くらい前くらいには約束の場所に来るべきよね。せめて5分前」

 美奈も美玲と一緒になって責め始める。

 美奈はうん。The・真面目って感じで安心できる。

 10時間待とうとしないところとか魅力的だ。

 春来はこの後も延々と女子二人に責められていた。

 春来。

 遅刻してないのに、めちゃくちゃ責められていて可哀相。

 いつもだったら遅刻しても基本スルーなのに。

 大遅刻したら文句の一つくらいは言うけど。

「いくらなんでも責め過ぎだよ」

 僕が流石に途中で止めに入る。

「瑠夏……」

 春来が僕を救世主を見るかのような目で見つめる。

 きっも。

「次お前が遅刻したら二人呼ぶわ」

「もう二度と遅刻しない」

 すっと真顔になった春樹が断言する。

 お、おう。そんなに嫌なのか。

「じゃあ行きましょうか?」

「ちょ!?いきなり!?」

 さっそうと美玲が歩き出し、僕たちもその後を追った。

 目指すは遊園地である。

 

 あれ?電車は?駅通り過ぎたよ?

 え?歩いていくの?

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