第34話

 時が流れるのは非常に早いもの。

 もう一週間が過ぎ去り、約束の時まで後少しとなった。

 僕は約束の時間になり、家を出る。

 ちなみに一人で。

 美玲に命令されて、遊園地に行く日は別々で行きたいとのこと。

 なので、僕は西園寺邸宅ではなく、僕の家から出るのだ。

 ……全然使われることのなかったここが最近よく使われるなぁ。

 

 約束の時間。

 それは土曜日の午前8時。

 そう。午前8時なのである。

 だが、僕が家を出た時間は大分早い。

 何故か。和葉という前例があるからだ。

 女の子を待たせるなんてあってはならない。

 あってはいけないのだ。

 なので僕が出たのは金曜日の午後8時。

 午後8時だ。

 約束の時間まで12時間前。

 半日前なのだ。

 なのに!なのに!なのに!

 なんでここにいるの!?美玲!?

 僕は平然と当たり前のように立っている。

「ごめん。待った?美玲」

「ふん!遅いわ。私を待たせるなんて何様のつもり?」

「ごめん。ちなみに何時間待たせちゃった」

「ん?別に気にする必要はないわよ。まだ3時間しか待っていないもの」

 ……午後5時。

 家に帰ってすぐ家を出たのかな?

「それにしてもきれいな服だね?似合っているよ」

 春来に教えてもらった言葉を一応言っていく。

 なんかそれがマナーらしい。

「何を当たり前のことを」

 だよね。

 それにしてもそんなにも楽しみだったのか。

 友達と出かけるの。

 それならもっと積極的に他人を誘えば。

 ……。

 ………。

 後半日。

 半日だ。

「帰りませんか?」

「は?何を行っているの?」

「いえ。今から帰宅し、一度睡眠してからもう一度来ませんか?」

「寝られるわけ無いでしょう?何を言っているの」

「いえ、寝てください」

「いやよ。帰るなんて」

「……そうですか」

「えぇ」

「じゃあどこか適当なホテルに泊まりませんか?」

 ホテルなら、ここから近くに行きつけのホテルがあったはずだ。

「ふやぁい?」

 冷徹女皇としてのぴくりとも動かさない無表情。

 それを思いっきり崩して、ぽかんと口を開ける。

 え?どうしたん?

「ほ、ほんき?」

 美玲は声を震わせながら僕に聞いてくる。

 何をそんなに動揺しているの?

「勿論でございます。それではご案内したします」

 美玲は歩き出した僕の後をうつむいてゆっくりとついていく。

 顔パスで受付の人から鍵を2つ貰い、エレベーターに乗り、部屋に向かう。

「それではおやすみなさい」

「は?」

 僕は美玲にホテルの鍵を渡して、自分の部屋に入った。

 ホテルなら、家に帰ってないし、出掛けている感あるからいいよね。

 

 寝る少し前。

「何日和っているの私!?」

 という声が聞こえた気がした。

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