第36話
「どこに行くんだ?駅はこっちだぞ」
「……速く案内しなさい」
あっけらんと告げる春来。
美玲は何も言わず、案内するように話す。
そういえば、美玲が電車を使うのは初めてかも知れない。
基本的には車移動だし。
「はい、美玲」
僕は美玲にパスモを渡す。
「ん?何かしら?これは」
「これを使うと、簡単に電車に乗れるの。やり方は簡単だから、僕のを見ていて」
「えぇ。わかったわ」
わざわざこの日のためにパスモは事前に準備しておいた。
僕達は何事もなく改札を通り、雑談しながら電車を待つ。
まぁ雑談しているのはほぼほぼ僕と春来で、たまに美奈が参加する程度なんだけど。
「あ。美玲飲み物居る?」
「えぇ。ほしいわね」
「わかった。買ってくる」
僕は美玲にための飲み物を自販機で買い、美玲に渡す。
たまにはこういうのもいいだろう。
これもまた経験だ。
「お、おう。すげぇ自然にパシられるじゃん」
その光景を見ていた春来がポツリと呟く。
「いや、僕は美玲の執事だからね?これが自然だよ?」
「ん?あ、あぁ。そうか。そうだったけか。お前の対応が適当すぎて忘れてたわ」
「忘れないで?」
全くなんて失礼な奴なんだ。
一番美玲に対してこんな対応をとるのに疑問を思い、戸惑っているのは僕なんだからな。
「常に世話をしてくれる専属の執事なんてすごいわね。私の家も何か大きなことがない限り呼ばない存在なのに」
「いや、普通執事を家に呼ぶことはないよ?」
庶民派代表である春来が声を上げた。
そんな感じで僕達が雑談して待っていると、電車の到着を知らせる放送が鳴る。
時間の狂いなく目的地に到着する日本の電車はすごいよな。
きぃぃぃぃいいいいいいいいという音をたてて、電車が止まる。
「うるさい乗り物ね」
音を立てながら進み、止まる電車に美玲がささやかな文句を告げる。
そんな文句言わないで?
席は空いていなかったので、立って乗る。
乗り物に乗るときに座らず立って乗るなんて初めてで信じられないのか、美玲だけでなく美奈も一緒に驚き。
それを見て春来がドン引きしていた。
その後もなんやかんやありながらも、なんだかんだ僕達は遊園地についた。
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