第21話
「は?」
朝、僕が切っていたスマホの電源を入れるといきなり電話のコールが鳴る。
その相手は和葉。
「えぇー」
僕は履歴を見てドン引きする。
もはや通知の数を数えるのが馬鹿らしくなる。
なんじゃこれ。
もう怖い。怖いんだけど。
今もなおずっと電話のコールが鳴り響いている。
……うるさい。
僕は無言でスマホの電源を切った。
「ふぅー」
さて、今日も元気に頑張るか。
僕は自分の部屋を出てお嬢様の部屋に向かった。
うーん。
今日もお嬢様の部屋は臭い。非常に臭い。
■■■■■
学校で。
今日の学校はまるで地獄のようだった。
僕には和葉とお嬢様からじっとりとした視線をずっとぶつけられる。
もうドロドロとした感情はお腹一杯である。
クラスメートたちはみんな一様に怖いぐらいに震えている。。
教室にはカタカタという音が鳴り響いている。
なんかアンモニア臭もしている。
そして、震えているのは生徒だけじゃない。先生もだ。
昨日のことには誰も触れない。
触れられない。
すべての人が一様に忘れることを、なかったことにするのを望んでいた。
だがしかし、そんなこと。
なかったことにできるはずもなかった。
朝のホームルームが終わると、和葉が立ち上がり僕の方に向かってくる。
まず先生が逃げた。いそいそと教室から立ち去っていた。
その表情は必死そのもので、動きも俊敏だった。
だが、クラスメートたちは逃げるわけにはいかない。
クラスメートたちの動きはまるで訓練された軍隊のように滑らかで無駄がなかった。
クラスメートたちは僕を囲むように立ち、和葉を近づけないようにした。
彼ら彼女らの行動は最善だったといえるだろう。
しかし、
「邪魔」
このたった一言。
このたった一言でみんなが退いた。
みんが本当にきれいに退き、僕へと続くきれいな一本道が出来た。
和葉の圧力に勝てるものなんていないのだ。
……まぁいるけど。
「くっ」
春来が少したじろきながらも僕をかばうように立つ。
「ふふふ」
そんな春来に圧力をかけるようにゆっくり和葉が歩を進める。
「瑠夏ぁ?」
和葉からぞわりとするようなドロドロとした激情が僕に向けられる。
瑠夏。
その名を聞いて今まで沈黙を保っていたお嬢様も動き出す。
昨日ほどではないにしろ、一般人にとってトラウマレベルの殺気があたりを充満する。
クラスメートたちはもう悟りを開き、春来の手は少し震えている。
さすがに僕が何もしないというのは認められないよね。
僕は何気なく、いつもと同じように口を開いた。
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