第20話

「瑠夏ぁ」

 お嬢様が甘えた声をだし、僕にもたれかかる。

 家に帰って、砂糖ダブダブのコーヒーを飲んですぐこれになった。

 なんか砂糖ダブダブのコーヒーすでに用意されていたし。

 ……僕、お嬢様のコーヒーを用意しておくなんて連絡を貰っていないんだけど。

 後で色々とお話しないと。

 もしこれが暗殺者の用意していた毒入りのコーヒーだったらどうなっていたことか……。

 恐ろしい。

「瑠夏は私のなのよ!他の女と話すなんて許されないんだから!」

「それは承知致しかねます」

「なんでよ!私の言うことは絶対なのよ!」

「それは承知しています。しかし、私にも様々な事情がございます。学校での生活などです。それらをこなすのに他の女性と話さないというのは不可能にございます」

「ぶー!」

 僕の言葉を聞いたお嬢様が頬をぷーっと膨らます。

「ばかばかばかばかばか!」

 そして僕の頭をポカポカと殴りだした。

「なんでよ!私だけを見て!私だけを愛して!」

 ……不可能なんだが。

 私だけを見てとか。

 仕事できないじゃん。

 私だけを愛してとかはもう論外だよね。

 僕はお嬢様の道具だと言うのに。

「ぷー!仕方ないわね。せめて私の遊びに付き合いなさいよね!」

「承知いたしました」

「じゃあ、何しようかしら?夜ご飯でも一緒に作りましょうか?」

「危険ではないでしょうか?お嬢様」

「大丈夫よ!大丈夫!何かあったとしても瑠夏が助けてくれるでしょう?」

「はい。当然にございますが」

「なら、大丈夫よ!ほら!早く行きましょう!私達二人が作る愛の料理が待っているわ!」

 お嬢様が僕の腕を組み、意気揚々と歩き出した。

 腕を組みながらお嬢様を歩きやすそうに歩くというのはかなり面倒なのだが……。

 僕はお嬢様に見れないようにスマホを操作し、料理人たちに指示を出しておいた。

 これでいいだろう。


「きゃー!」

「危ないですよ。お嬢様。包丁はこう持つのです」

「後ろから私をギュッと抱きしめて、教えて」

「承知いたしました」

「はぁー。瑠夏の匂いに包まれてる」


「わー見てみて!ぐつぐつ言っているわ!」

「そうですね。お嬢様」

「この、アク?というのを取ればいいのよね?」

「そうでございます」

「……よし!できたわ!」


 お嬢様が初めてお作りになられた手料理。

 本来ならばお嬢様が口にして良いような味ではないのだが、お嬢様が作っているところを邪魔するわけにも、料理をすり替えるわけにもいかないので、そのままだ。

 まぁ自分で作ったものだし美味しく感じるだろう。

 

 ■■■■■

 

 いつもどおりお嬢様を寝かしつけた後スマホを確認すると、通知の数が約10000件。

 ……。

「いいや」

 僕はぽいっとスマホをベッドの方に投げる。

 あんなにたくさんの読んでいられるか。

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