第15話
日曜日。
和葉と楽しい休日を過ごした僕はおそらく世界で最も憂鬱であろう月曜日に学校に来ていた。
「あー、学校たりぃー」
先に学校に来ていた春来もだらーんと腕を伸ばし、だるさを全力で表現していた。
「お前はどうせ授業中もラノベを読んでいるだけだし、関係ないだろ」
「まぁな」
「いや、まぁなじゃないだろ。少しは否定しろ?」
「いや、だって事実だし」
僕と春樹が雑談していると、また校門のほうがざわめきだした。
お嬢様が来たのだろう。
「にしても飽きないよな」
「毎日やっているもんね」
お嬢様が教室に入ってくると同時にクラスがざわめきだす。
「はぁー、三次元の何が良いんだが」
「そんな考えしてんのお前くらいだよ」
「ふざけんな!同士はたくさんいる!」
「その同士たちは可愛いじょしこーせーにすり寄られてたころっと意見を変える
だろうけどね。それに確実にこの学校にはお前だけだ」
「そんなことないぞ!いるからな!」
「えー」
一応ここ名門学校なんだけど。
土下座が飛び交う名門学校なんだけど。
土下座だけでなく限界オタクまで生息しているの?
もう名門学校なのんな。
まぁでもお嬢様を見てざわめいてしまうのは仕方ないとも言える。
お嬢様には、西園寺家の一族にはそういう力みたいなのがあるのだ。
西園寺家の一族はカリスマなのか、オーラなのか、よくわからんけど、人々の注目を集め、自らを魅力的に見せる特殊なものを持っているのだ。
故に出来たばかりの新興企業でも古き財閥とかにも舐められることがないのだ。
すごいよね。
まぁその特別なものは僕達の一族には感じることができないんだけどね。
お嬢様はいつもどおり誰とも話さず一人席に着く。
そしてカバンから本を取り出し、読み始める。
……読み始める。
1ページも捲られることはないけど、読んでいるのだ。
「はー、本読んでるとこも様になるよなー。俺とは大違いだ。やっぱりあれか?ラノベだからか?」
「そういうことじゃないと思うよ」
僕以外の周りの人たちにとって1ページも捲られていないというのは大したことではないようだ。
……大したことだよね?
お嬢様の登場のざわめきが落ち着き出した頃、教室に和葉が入ってくる。
「おはよう」
「ん。おはよう」
和葉はいの一番に僕のもとに来る。
一瞬お嬢様の方に視線を向けたのが謎だった。
「昨日は楽しかったね!」
「うん」
「はいこれ」
僕は和葉からクッキーが入った袋を渡される。
「昨日美味しいって言ってくれて嬉しかったよ!また、食べてくれると嬉しいな……」
和葉が指をもじもじさせながら恥ずかしそうに和葉が言う。
そして……。
「は?」
空気が凍りついた。
みなが凍りついた。
凍りついた世界でお嬢様だけが動き出す。
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