第13話
「ようこそ!」
和葉の家に着くなり和葉から熱烈な歓迎を受ける。
お嬢様の邸宅ほどではないが、和葉の家もなかなかに立派である。
掃除しがいがありそうだ。
別に掃除しに来たわけじゃないけど。
「今日はどうしたの?」
「あ、えっとね。実は私の家にあった変な箱が不気味に動き出して……」
「動き出して?」
「うん。そう」
「まぁとりあえず見せてよ」
僕はよくわからなかったが、とりあえず見せてもらうことにした。
呪物とかだと何が起きても不思議じゃないからね。
僕と和葉は家の中を歩く。
ふーむ。
ホコリが少々。
全体的に少し汚れは見れるが、まぁ概ねきれいだろう。
ギリギリの及第点を上げる。
「ここだよ」
僕たちは一つの部屋の前にたどり着いた。
「開けていいの?」
「うん」
僕が部屋の扉のドアノブに手をかけた瞬間。
僕にひどくドロドロとした、お嬢様に向けられるような感情に似たような感情を向けられる。
はて?
なんで和葉から?
僕は感情を向けられた理由がわからなかったが、とりあえず気にしないことにした。
僕は何も気にしないことにして扉を開ける。
ぞわり。
部屋の中に入ると呪物の嫌な気配が僕を襲う。
結構強めの呪物が置かれているな……。
部屋の中心に置かれている一つの木箱。
とてもきれいな装飾がなされていてパズルのような形をしている。
僕がその箱に一歩近づくと同時に木箱から呪力が膨れ上がった。
視界は赤く染まり、頭に小さな子どものうめき声、赤ちゃんの鳴き声が響き、16本の漆黒の腕が僕の方に伸びてくる。
16本の漆黒の腕は僕の中を這いずり回り僕という存在を飲み込んでいく。
「邪魔だよ」
僕は自身の呪力を爆発させる。
僕から溢れ出した呪力は縦横無尽に暴れまわり、木箱の呪力を打ち払った。
「ふぇ?」
僕の近くに来ていた和葉が変な声を出した。
……どうしたんだろうか?
まぁいいか。
僕に頼まれたことはこの木箱をどうにかすることだ。
「にょっと」
僕は右手に持った鉄の棒を振り上げる。
そして、木箱に振り下ろした。
「ちょっと待って!」
僕が振り下ろした鉄の棒が木箱を貫くその寸前のところで和葉に止められる。
「ん?」
「壊すのはちょっと。これが何なのかまだお父さんやお母さんが聞いてないし」
……別によくない?
こんなのさっさと壊すべきだと思うんだが……。
「瑠夏が何してくれたのかはわからないんだけど、とりあえず怖い雰囲気がなくなったから大丈夫」
「そう?」
「うん!そうそう!」
「そっか。じゃあいいか」
どこか必死な和葉の様子に少し困惑したが、無理やり壊すわけにはいかないので、大人しく従うことにする。
「今日はありがとね。また何かあったら頼むね」
「うん。できるかどうかわからないけど」
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