第12話

「んー!」

 僕は勉強していた手を止め、凝り固まった腕を回す。

 今日、僕にはお嬢様の道具としての仕事はない。

 別に首になったとかそういうわけではない。

 ただ、久しぶりにお嬢様のご両親が帰っておられるのだ。

 半年振りか。

 久しぶりの再会。

 今日はお嬢様とお嬢様の両親で出かけておられるのだ。

 そこでお嬢様とお嬢様の両親の世話をするのが僕の両親。

 世話など僕の両親二人がいれば事足りる。

 僕なんか要らなかった。

 なので本当に久しぶりの休暇を貰ったのだ。

 まぁ勉強くらいしかやることないけど。

 今回のテストは一桁でも取ろうかなー。

 僕がそんなことを考えているとテーブルの上に置かれていたスマホがブルりと振動した。

 誰だ?

 僕が疑問に思いスマホを取るとそこには和葉からのレインが。

 和葉からのレインは初めて。

 交換して三日目でようやく初めての連絡をした。

 それまでおはようとかの挨拶すべて無視していたからな。

 レインとはスマホやパソコン、タブレットなどで利用できるアプリケーションです。 レインアプリのユーザー同士で、無料でメッセージのやり取り、音声通話、ビデオ通話ができる便利なアプリだ。

 世界的に広まっているすごいアプリ。

 西園寺家のビジネスの一つだね。

 レインの内容は、至急来てほしいとのこと。

 何かあったのかな?

 そして補足として僕のアパートに車を走らせているとのこと。

 僕がレインの内容を読み終わったタイミングと同時にインターホーンが鳴らされる。

 あっぶね!

 たまたま僕がアパートにいたからよかったものの、お嬢様の邸宅にいたらどうなっていたか……!

 というか、そもそも今日僕が休みでよかった。

 休みなのにやることもないんだ。行ってあげるとしよう。

 今行くと、返信して、僕は玄関の扉を開ける。

「琉夏様ですか?」

 玄関にはスーツをバシッと着こなした執事さんが立っていた。

「あ、はい。そうです」

「ありがとうございます。お嬢様がお呼びです。ついてきてもらえますか?」

「あ、はい。いいですよ」

 僕はできるだけ普通の高校生を演じようと努力する。

 演技なんかしたことないし、普通の高校生がどんなものかはわからないが、とりあえず春来が言いそうなことを考えて話す。

 多分あいつなら適当に敬語で話すだろう。

「では、こちらへ」

 僕はアパートに泊められているリムジンに乗せられる。

 ……このアパートの前にリムジンが泊まるの3回目だぞ。

 この短期間で。

 近隣住民困惑だぞ。

 僕は大人しくリムジンに乗り込む。

 そしてすぐに異変に気付く。

 小型の監視カメラと盗聴器が仕組まれている!

 多くね?

 多すぎね?

 監視カメラ数が計126機、盗聴器が345機あるぞ?

 何に使うっていうんだよ。

 絶対にこんなに要らんだろ。

 どんなに必要であっても最大10くらいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る