第9話
「ん?」
学校も終わり、いつもどおりバイクで帰るためバイクの方に向かっていると、僕に近づいてくる気配を感じた。
……これはお嬢様?
なぜ?
ついさっきお嬢様はリムジンに乗って帰ったはずでは?
それに睡眠薬の匂いもするのだが……。
……。
まぁいいか。
「ふっ」
僕は一切抵抗することなくそのまま食らうことにした。
顔に布を当てられ、薬品の匂いを強制的に嗅がされた。
僕はあっさり意識を手放した。
■■■■■
知らない天井だ。
そう言いたいところだが、実によく知っている天井だった。
ここは僕の家だ。
学校に通うに当たって必要になって僕の家。
普段僕はお嬢様の家である西園寺邸に用意されている使用員スペースの一室で過ごしている。
しかし、入学する際にお嬢様と同じ住所にしておくわけにもいかない。
僕はお嬢様と何の関係もない、という設定なのだから。
なので僕は急遽自分の家が必要になったのだ。
それで用意したのがこの家。
いや、家というかアパート。
アパートの一室を借りているのだ。
何か学校の交友関係で必要になることがあるかもしれないので一応この部屋も日常生活がこなせるだけの家具はある。
のだが、僕が見渡し限りこの部屋に家具はない。
そしてアパートは狭く、一部屋にキッチン、トイレ、風呂があるだけである。
おかしい。
今まであったはずの家具などはなく、どんと大きなベッドが置かれている。
そしてそのベッドに僕が寝かされていた。
僕の首には首輪が繋がれ、首輪から伸びる鎖がベッドのへッドボードに繋がれている。
足首もロープで繋がれ、動かせない。
「おや?起きたのね」
お嬢様がにこやかな笑みを浮かべて近づいてくる。
「はい」
「なんで?なんで私以外と?」
「ん?」
冷たい声。
お嬢様が冷たい声で告げ、僕を睨みつける。
なんだろう?
何がしたいのだろうか?
理解できない。
「あなたは何?」
「お嬢様の執事にございます」
お戯れか?
遊びなのかな?
まぁよくわからないが最後まで付き合うとしよう。
「そうでしょう?なのになんでなんであなたが別の女と……!別の女と……!」
「……」
僕は黙る。
どうすればいいのだろうか?
どう答えるのが正解なのだろうか?
わからない。
お嬢様は一体何がしたいんだ?
僕が困惑していると、ピーンポーンというチャイムの鳴る音が響く。
「はーい」
執事として、客人を待たせるわけにはいかない。
まずは足首の関節を外し、足首を縛っていたロープから抜ける。
その後首輪も外して、立ち上がる。
この間約1分未満。
急いでドアを開け、客人を出迎えた。
「へ?」
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