第7話

「おう、おはよう。今日も髪キマってるね」

「うるさい!」

 僕はからかうように笑う春来の頭をチョップする。

「というか、よく頭髪検査に引っかからないね?」

「まぁ色々有るんだよ」

 僕の髪は右目だけを隠すように伸びている。

 高校の身だしなみとして髪は目にかからないようにあるが、僕の場合は完全にアウトである。

 なんて言ったて完全に右目を隠しているからな。

 しかし、黄金のお菓子を握らせればイチコロよ。

 座布団を敷いて交渉するからな。

「ふーん。まぁいいや。あ!聞いてくれよ。また新しい嫁を見つけたんだ。これなんだけどな」

 春来が嬉々としてラノベを見せる。

「あー、うん。はいはい」

「それでよー!これが本当にかわいいんだわ。ほら、これ見て?」

「あー、うんうん」

 僕が興味なさげに相槌を打っていると、校門の方からキャーという歓声などが聞こえてきて一気にうるさくなる。

「お?おいでなすったようだな。冷血女皇様が」

 窓から校門の方を見ると、黒いリムジンが堂々と止まっている。

 使用人が現れ、車のドアを開ける。

 そこから堂々と西園寺 美玲、お嬢様が出てくる。

「ほー、きれいだねぇ。アニメキャラみたいだぜ」

「お?好きになったかい?」

「なわけ」

 僕の質問に春来が嘲笑で返す。

「あ、あの瑠夏くん?今平気?」

「ん?何?」

 僕は話しかけられ、声がした方に振り向く。

 僕に声をかけてきたのは一人の少女。

 四宮 和葉。

 この学校の委員長であり、良家の娘さんである。

 肩くらいにまで伸びた艶のあるきれいな黒髪に大きな瞳。

 普通に可愛い少女である。

 ちなみにだが、この学校。

 この国のいい家に生まれた坊っちゃん、お嬢様が集まる私立高校。

 リムジンで投稿してくるような狂った奴らがたくさんいるのだ。

 え?春来?

 あいつは近くの本屋さんの跡取りだよ。

 小さなね。

 この学校に通っている超有名出版社の社長の娘に土下座したことはあまりにも有名である。

 それはそれは見事の土下座であった。

 あれ以来この学校では何かあったら土下座するという風習ができた。

 この学校においては一週間に一回は土下座を見ることができる。

 なんで?

 いや、なんで?

 ここは坊っちゃん、お嬢さんが数多く通う学校なんだよね?

 なんで土下座は飛び交っているの?

「えっとね。瑠夏くんに頼みたいことがあるんだけど……」

「頼みたいこと?」

「うん。えっとね……」

「ん?何って言った?」

 和葉の声が小さすぎてよく聞こえず、顔を近づける。

 ぞくり。

 いきなり背筋に悪寒が走った。

「お、おい。あれ」

 春来に肩を叩かれ、顔を上げると見たことないような冷たい目で僕を見るお嬢様の姿があった。

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