第3話
「瑠夏。いつもの」
「承知いたしました」
僕はお嬢様のためにコーヒーを淹れる。
このコーヒー。
いちばん重要なのは砂糖。
コーヒーと砂糖の比率が5:5になるように淹れるのである。
もう砂糖飲んでいるんだよね。
せっかくの高いコーヒー豆なのにもったいなく感じてしまう。
お嬢様たちからしてみればはした金だとは思うけど。
せっかくの美味しいコーヒーを砂糖で全てを台無しにしたコーヒーをお嬢様に差し出す。
「ただいまお持ちいたしました。お待たせしてしまって申し訳ありません」
「いただくわ」
コーヒー入りの砂糖をお嬢様が心底美味しそうに飲む。
スプーンを使わないであれを飲めるのはすごいな。
コーヒー入りの砂糖を飲み終えたお嬢様の頬は赤く染まり、目もトロンとしている。
「瑠夏!」
「はい。なんでしょう。お嬢様」
「一緒にゲームでもしましょう?」
「えぇ。喜んで」
「ほら、早く早く!」
お嬢様は僕腕手を取って引っ張り、場所を移動させる。
来た場所はお嬢様の私室。
決して他の人には入れない場所だ。
ここに入ることが許されているのは僕だけ。
使用人はもちろん。御当主様でも許されない。
「ほら、早くしましょう?」
「えぇ」
お嬢様はせっせとテレビゲームの準備をする。
本来は僕がやるべきことなのだが、お嬢様に触らせてもらえないのだ。
非常に心苦しいが見ていることしかできない。
「じゃあ始めましょう!はい!これ。瑠夏のコントローラね!」
「ありがたく頂戴します」
「さぁ!私達の愛の巣を作るわよ!」
「微力ながら協力させていただいます」
お嬢様が今ハマっているゲームが世界の要素がすべて「ブロック」で表現されていて、 プレイヤーがこのブロックを壊したり、集めたり、積み上げたりして遊ぶよくわからないゲーム。
なんで子供の積み木遊びや砂遊びのようなゲームのどこが楽しいのかは個人的にわからないが、お嬢様が望んでいる以上僕も謹んでプレイしなければならない。
「きゃー!クリーパー!」
「お助けします」
お嬢様の背後で爆発しようとしていたクリーパー?と呼ばれる爆発する緑色のよくわからない生物を殺す。
危なかった。ゲームとはいえ、お嬢様が死ぬなど許されない。
「ありがとね!」
「いえ、執事として当然のことをしたまでです」
楽しそうに笑いながらゲームをするお嬢様。
その姿は学校や社交の場で見せる冷たい冷血女皇の面影など微塵もなかった。
それはなぜか。
その理由はお嬢様は糖分を摂ると、甘えるのが好きな普通の女の子のようになってしまうからである。
いや、意味がわからない。
だが、それが真実なのだ。
なぜだろうか。
全くもって意味がわからない。
お嬢様の頬は病気を疑うまでに赤く染まっているし、なんかやばい状態なんじゃないかと心配になる。
大丈夫だよね?
なんか危険な薬物が砂糖に含まれているんじゃないかと疑いたくなってしまうのだ。
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