第10話 家族
「ミラグレス学園だって?」
「アレン、本当なの?」
「うん、そうなんだ…」
ミラグレス学園に平民がいないわけではない。しかし、平民であっても性を持つような特別な者たちだけである。もしかしたら性を持たない平民での合格は俺が初めてなのかもしれない。
話を戻すが、ミラグレス学園を受けるということは腕に自信があり、なおかつ家も裕福でなければならない。ミラグレス学園に通えるだけの資金がないだけでなく、ラグラール学園と間違えて受験した俺を父さんたちはどれだけ怒るだろ
「「すごいじゃない(か)!」」
うか…え?
「え?怒らないの?」
「ん?何をだ?」
「だってそんなお金うちにはないし、学園を間違えたなんて…」
「「はぁ…」」
父さんと母さんは顔を見合わせため息をついた。
「いいかアレン、父さん達はミラグレス学園に合格したことの方が嬉しいんだ。それにお金はなんとかする。昔は父さんも冒険者をやってたんだ、どうにかなる」
「まだ子どものあなたがお金の心配なんてすることなんてないのよ、それに父さんが言ったけど私たちはミラグレス学園に合格したことの方がすっごく嬉しいの」
「ありがとう、父さん、母さん。あ、実はお金のことなんだけど」
「それは私から話そう」
後ろからリアが言った。しかし、お金のことだ。なにも立って話すこともないだろう。
「よかったら家で話さない?俺もエリナと会いたいし」
「いいのか?」
「むしろリアはいいのか?」
「ああ、よろしく頼む」
俺は父さんと母さんの方を向いた。2人は頷いた。つまりいいのだろう。
少し歩くと我が家に着いた。村を見て思ったように家もひどく懐かしく感じる。それだけこの1週間が特別だったのだろう。そう思いながら俺は扉を開けた。
「ただいま」
「にーさまー!」
奥の方からエリナが走ってきて、そのまま抱きついてきた。
「お帰りなさい!エリナはいい子にしてました!」
「そうかそうか」
俺はそう言いながら頭を撫でてやる。本当に可愛い妹だ。
「ほう、この子がアレンの妹か」
「なっ!あなたは誰ですか!兄様は渡しません!」
「エリナ、彼女はリア。王都で知り合ったんだ」
「改めて、リア・エルレンシアだ。よろしく頼む」
「にゃ!貴族様!?す、すみませんでした!エリナです、よろしくお願いします」
エリナがとても緊張している。まあ、普通貴族がこんなとこに来るとは思わないよな。
俺はエリナを連れながらリビングへリアとクリスさんを案内する。椅子が四つしかないためエリナは俺の膝の上である。クリスさんは「私はリアお嬢様の護衛ですので」と言い座らなかった。
先に着くとリアが説明を始めた。
「さて、早速だが結論から言おう。私がアレンの学費を出すつもりだ」
「なっ!」
「本当ですか!?」
父さんと母さんが驚きの声を上げる。母さんなんて少し疑ってしまっている。
「まあ、理由としてはアレンと約束したと言うのもあるが面白そうだからだな」
「面白そう、ですか?」
「ああ。それに知り合ったばかりとはいえ友だからな」
「そうですか…ちなみにいつまでに返せばよろしいのですか?」
「ああ、考えていなかったな。ふむ…無期限で大丈夫だ」
「しかし、貴族様とはいえ大金では?」
「なに、その程度すぐに稼げるさ。無論私自身がな」
「「…」」
「カッコいい…!」
二人は今度は絶句している。あの大金をその程度と言えるとは俺も驚いた。エリナはリアを見て目を輝かせている。
「他に質問は?」
「いえ大丈夫です」
「私も大丈夫です。どうかアレンをよろしくお願いします」
母さんがそう言い頭を下げると父さんも頭を下げた。
「ああ、任された」
リアはそう言い、二人と握手をした。
細かいことを確認したあとリアとクリスさんは馬車に帰っていった。昼ではあるが明日にはここを出ないといけないので家族水入らずの時間を過ごせということらしい。リアなりの気遣いだ。
また、ここに再び帰って来れるのは約4ヶ月後である。
そのため寮に持っていくものの用意もしなければならない。
「アレンご飯よ〜!」
「わかったよ、すぐに行く」
ああ、一週間前にもこんなやり取りをした気がする。だがこんなやり取りもしばらくはできないのだ。そう思うと込み上げてくるものがある。
すでに三人とも座っていて最後は俺だった。
「「「いただきます」」」
「どうぞ、召し上がれ」
それから食事をしながらたくさんの話をした。今までのことや王都でのことなど。もちろん他にもある。久しぶりの家族全員での夕食は美味しいだけでなくとても暖かかった。
失敗から始まる英雄譚~受ける学園間違えました~ 藍那 @Aina127
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