第9話 到着ルブラ村、そして…
行きと違いルブラ村へはトラブルなく到着した。一週間ほど村にいなかっただけでひどく懐かしく感じる。
「ここがアレンの村か」
「ああ、俺の自慢の村さ」
確かにここは王都に比べたらだいぶ不便かもしれないが、ルブラ村は自然と人が共存しているのどかな村である。俺はこの場所が一番落ち着く。
村の入り口に着くと村人たちがなんだなんだと次々に押し寄せてきた。しかし村長が村人たちを追い返し馬車に向かって跪いた。
「ようこそルブラ村へいらっしゃいました。私、村長のオルドと申します。本日はどのような御用向で?」
俺は村長がここまで礼儀正しい姿を初めて見た。「ガッハハ!」となんでも笑い飛ばすような豪快な人なのに…。
リアとクリスさんが馬車を降りたのでそれに続いて俺も降りる。すると村長が俺の顔を見てギョッとした。
「なっ、まさかウチのアレンが何か粗相を!?」
「「えっ!?」」
村長がリアに問いかけているのを聞いていた両親がリアの前にでて頭を下げた。
「申し訳ございません!どうか息子の命だけはどうか、どうかお許しください!」
「せめて私たちの命でお許しを!!」
あ〜、これが勘違いに勘違いが重なった結果か…。リアなんて笑いを堪えている。
「あの父さん、母さんえっと…」
「とりあえず、私は命を取る気など全くない。だから安心して欲しい」
父さんと母さん、村長がえっ?という顔をする。そして疑問に思ったのか村長がリアに尋ねる。
「それではいったいなぜアレンを連れていらっしゃるので?」
「アレンとは王都で知り合ってな、今では私の友だ。だから楽にしてくれ。友の両親に頭を下げさせるなどいい気はしないのでな」
父さんと母さんが抱き合っている。母さんは涙を流している。
「それではなぜ?」
「ああ、理由を言っていなかったな。それはここにいるアレンくんがなんとも面白い失敗をしたのでその説明をしに来たのだ」
リアがこっちを向いてニヤニヤした表情を浮かべる。俺は思わず顔を下を向けた。くっ、分かってるよ…。
しかし、なぜだろう?なんとなくアリスにバカにされた方が腹が立つ。えっ?というアリスの声が聞こえた気がした。なんというかアリスは全体的に残念な感じがするからな…。
「とりあえず両親の元へ行ってこい、話は後で大丈夫だからな」
「ありがとな、リア!」
「ああ。村長、すまないが厩舎を借りてもいいだろうか?」
「はい、もちろんです。では馬を連れて行かせていただきます」
「すまない、感謝する」
「いえいえ」
俺は両親の元へ向かった。
「父さん、母さんただいま!」
「ええ、おかえりなさい」
「ああ、おかえり」
両親は俺を抱きしめてくれた。ああ、とても落ち着く。抱きしめられたのなんていつぶりだろう。
そして思い出したように父さんが言った。
「アレン、学園に無事合格できたのか?」
「アレンならもちろん合格よ!」
「えっと、その…合格はしたんだけど…」
「?どうしたの?」
合格はしたが正直言いづらい。そして何より恥ずかしい。しかしここで笑みを浮かべながらこちらへ向かってくるリアがバッサリと言った。
「確かにアレンは合格したな、ミラグレス学園に」
「「えっ?」」
「えっと、そうなんだ…」
「「ええーーーー!?」」
ルブラ村に驚きの声が響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます