第6話 ハワード商会にて 1

「で、早速だけどハワード商会ってどこにあるんだ?」

「お〜ハワード商会ってかなり大きな商会じゃなかったっすか?」

「はい、その通りですアリス皇女殿下」

「あの、リアさんはもっと砕けた感じで話してくれていいんすよ?私はそうしますし」

「あの、よろしいのですか?」

「もちろん!私、堅苦しいの苦手なんすよね〜それにリアさんとは仲良くできる気がしますし」

「ではお言葉に甘えて」

「よろしいっす!」



二人が顔を合わせて笑っている。どうやら二人の距離はかなり縮まったようだ。なんというか堅苦しい感じは俺も性に合わないし良かったと思う。


「アレン、さっきの話の続きだがハワード商会は北にある」

「そうなのか?」

「ああ、〈北のハワード〉そう呼ばれるほどの大商会だ。」

「拠点を王国に置きながら帝国でも名が上がるほどの商会っす」


それから俺はハワード商会についていろいろと2人に教えてもらった。二人には道案内もしてもらっているのだが何故か東の城門の方へ向かっている。疑問に思い俺は尋ねてみた。


「なあ、〈北のハワード〉って言われるくらいなら商会も北にあるんじゃないのか?」

「?当然商会は北にあるぞ」

「ああ、東の城門の方へ向かっていたから疑問に思ったんすね?」


俺は頷く。


「今は馬車の乗り場に行ってるんすよ」

「王都では長距離の移動の際には基本的に馬車を使うのだ」


なるほど、王都の道幅はやけに広いなと思っていたがそういうことだったのか。しかし流石王都、田舎の村などとは違い道路や移動手段も充実している。


そして俺たちは馬車乗り場に着いた。俺は何も分からないので申し訳ないと思いながらもリアとアリスに頼んだ。二人は「気にするな」と二つ返事で了承してくれた。店内に入るとリアとアリスを見た男性店員は走りながらこちらにやって来た。


「こ、これはアリス皇女殿下とエルレンシア公女ではございませんか!い、いったいどのようなご、ご用件で?」

「ハワード商会行きの馬車を頼む、3人だ」

「は、はい!すぐさま手配させていただきます!おい!最高級の馬車を用意しろ!ハワード商会行きだ!」

「分かりました!」


店員たちは慌てながらもすぐに馬車を用意した。もう出発できるらしい。


「よし、行くか」

「ええ、行きますか!ほらアレンもはやく乗るっす!」


乗車マナーなんて知らないが少しでも綺麗に乗ろうとしたらアリスに急かされた。周りからは「何で平民が一緒に?」という怪奇の目で見られている。胃が痛い。


乗り込んだ後の移動はとても楽で、揺れも全くというほど感じなかった。そのためハワード商会へはあっという間に着いた。俺たちはハワード商会へ入るとまたしても馬車乗り場と同じように慌てて受付嬢がやってきた。


「ハワード商会にいらしていただき誠に感謝致します。アリス皇女殿下、エルレンシア公女。して、本日はどのような御用向きで?」


しかし、所作や言葉遣いなどはあちらと比べ物にならないほど丁寧である。


「いや、用があるのは私ではなくそこのアレンなのだ。ここにアティラという男はいるか?」

「アティラ様よりアレン様のことは伺っております。アティラ様なら今商会長と話をしておりますので少々お待ちしていただいてもよろしいでしょうか?」

「ああ、話が終わったら呼んでくれ」

「分かりました、それではこちらの部屋へ」


俺たちはかなり豪華な部屋に通された。「ソファにお掛けしてお待ちください」と言われたのでソファに座っているのだが、とてもソワソワする。周りには綺麗な風景画や人物画がいくつか飾られている。平民には絶対に手が届かない代物であろう。そしてアティラさんは1分もしないうちに来た。


「わざわざ来てもらって悪いねアレン君、そしてようこそいらっしゃいましたアリス皇女殿下、エルレンシア公女。私はアティラと申します。失礼ですが何故アレン君とご一緒で?」

「それは私やアリスとアレンが友であるからだ」

「友、と?いつからお知り合いで?」

「今日っすよ」

「御二方はミラグレス学園を受験したのでは?」

「そうっすよ、そしてアレンもです」

「?アレン君はラグラール学園を受けたのでは?」

「え?ミラグレス学園を受験してましたよ?」


二人が混乱している姿を見てリアは笑いを堪えている。しかもこちらをバカにするような目をしながら。そうだよ!俺がバカだったんだよ!


「アリスの言う通りアレンはミラグレス学園を受験している。間違えて• • •、な」

「「え?」」


2人の驚きの声が重なった。

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