第2話 王都到着

今は二日目の昼頃である。そして、王都への旅は順調であった。つい先程まではだ。


バキッ!ガッシャーン!


「うわっ!」

「アレン君大丈夫かい!?」

「痛っ、あ、アティラさん僕はなんともないです!」

「怪我はしていないかい?」

「はい、尻もちをついただけなので」

「そうかい、安心したよ。だがすまない…」

「どうしたんですか?」

「車輪が完全に壊れてしまっていてね、直すのにも半日はかかってしまうんだ…」

「なっ!」


かなりまずいことになってしまった。明日は学園の試験である。間に合わないとなれば当たり前だが合格などもってのほかだ。


「明日の試験には間に合いそうにないですか?」

「間に合うと思うがギリギリだね。確か試験は昼からだったよね?」

「はい」

「それなら大丈夫だろう、荷物は僕が預かっていれば宿を探す必要がないからね」

「すみません、わざわざ荷物まで預かってもらうことになってしまって」

「こちらこそ本当にすまないね、事故とはいえ僕が馬車の車輪を壊してしまったからね」


アティラさんはやはりとてもいい人だ。乗せてもらっているだけの僕に素直に謝ってくれた。


「車輪の修理で手伝うことはありますか?」

「いや、大丈夫だよ。作業自体は簡単だからね。それにアレン君は明日が試験だ。剣の素振りや魔法の練習なんかをして待っていてくれ」

「気を使って頂きありがとうございます、アティラさん」

「そうだ、王都へは明日の早朝に向かう予定だから一応早めに準備をしておいてくれ」

「わかりました。では向こうの方で素振りなんかをしてきます」

「うん、いってらっしゃい」


せめてアティラさんが作業中に気を使わないように離れた場所に移動した。ラグラール学園は王都の東の城門近くにある。


ルブラ村は王都から東の方に位置しており、そのためこの馬車は東の城門から入る。距離的に近いのはラッキーである。


剣を振っていると時間はあっという間に過ぎていた。素振りの回数が一段落したとき、ちょうどアティラさんがこちらに手招きをしていた。車輪の修理が終わったのだろう。


しかし、夜に移動するのは危険だ。そのため今夜はここで野宿をするのだろう。そうして、俺は夕食を食べ早くに眠りに入った。




翌日の朝、俺とアティラさんはかなり早くに起き、移動を始めた。今から出発すると昼の前には着くそうなので安心した。車輪もしっかり回っており、他の車輪などももう一度確認したところ大丈夫だったようだ。


「荷物は僕が預かっておくから試験が終わった後に僕が所属している商会に取りにおいで。僕の名前を受付の担当に言ったら通して貰えるようにしておくから安心してね。ちなみに僕はハワード商会というところに所属してるよ」

「分かりました」


その後は前日と同じようにいろいろなことを話した。話していると近くに他の馬車が見えてきた。しかも列をつくっている。


「あっ!」


アティラさんがいきなり大きな声をだした。


「どうしたんですか?」

「僕としたことが忘れていた…今日は学園の試験があるからいつもより出入りする人が多いんだ」

「それはまずいですね…」

「うん、間に合うだろうけど本当にギリギリだね。行き方はわかっているかい?」

「はい、建物は見たことないけどだいたいは確認しています」

「良かった、それなら大丈夫だ」


最後尾について改めて思ったが、この列の人数だけでゆうにルブラ村の人数を超えている。ここまでの人は生まれて初めて見た。一時間たった頃やっと城門の前まできた。今は十二時で受付終了時刻は一時である。そして遂に俺たちの番が来た。


「次、前に来い!む、アティラではないか」

「久しぶりだねグレン」

「一ヶ月ぶりか?」

「多分それくらいだと思うよ、それとすまないが出来るだけ早くチェックをしてもらってもいいかい?」

「何か急ぎの用事があるのか?」

「うん、僕じゃないけど今乗せているアレン君が今からラグラール学園に試験を受けに行くんだ」

「なっ!後1時間もないじゃないか!少年!危険なものは持ち込んでいないな?」

「はい、持ち物は剣と袋だけです。」

「そうか、なら早く学園に向かいたまえ!もう始まってしまうぞ!」

「袋は僕が預かっておくから早く行きなさい、頑張るんだよ!」

「はい!ありがとうございますアティラさん、グレンさん!」


俺は二人に一礼して学園に向かって走り出した。


アレンが学園に走り去っていった後、後ろに馬車もいなかったため彼らはその場で話を始めた。


「しかし、若い者が頑張る姿は見ていて気持ちがいいな!昔を思い出す」

「確かにそうだね…時間が過ぎるのはあっという間だ」

「ハッハハ!ずいぶん年寄りのようなセリフを言うんだな?」

「なに、昔のとても楽しかった時間を思い返しているだけさ」


アティラは思い返していた。友と過ごした最高の時間を。

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