名探偵ラト・クリスタルの追放

探偵騎士団からの挑戦状

朗読配信向け『名探偵ラト・クリスタルの追放』これまでのあらすじ①

これまでのあらすじ

　この世界は四つの《秘密（ひみつ）》でできている。

　はるか古代、四人の《大賢人（だいけんじん）》が女神と交（か）わした《約束》は世界を創造（そうぞう）した。

　だが、その約束がどんなものなのかは誰も知らない。

　大賢人のひとり、冒険者アンドレアス・アレキサンドライトが築（きず）き上げた《迷宮街（めいきゅうがい）》アレキサンドーラには迷宮攻略を目指す冒険者たちが集まる。

　彼らの目的は女神の加護（かご）によって強力な魔術の力を発揮（はっき）する鉱石、レガリアを手に入れること。

　名探偵ラト・クリスタルもまた、この稀少（きしょう）なレガリアを求めて迷宮街に姿を現わした。しかし彼の目的はレガリアの中でも特別なレガリア、女神レガリアであった。

　ラトは類（たぐい）まれな洞察力（どうさつりょく）と知能（ちのう）をいかし、ギルドの牢屋（ろうや）で出会った駆（か）け出し冒険者クリフ・アキシナイトを相棒（あいぼう）に数々の難事件を解（と）き明（あ）かしていく。

　二人は《竜人公爵》の事件を解決した流れで、悪鬼（あっき）と呼ばれた謀将（ぼうしょう）イエルクが暮（く）らした砦（とりで）を訪（おとず）れる。

　そこで、ラトはクリフ・アキシナイトがイエルクの孫（まご）であることを知る。

　クリフはイエルクの呪（のろ）われた血の連鎖（れんさ）を止めたいと願（ねが）って迷宮街を訪（おとず）れ、アンダリュサイト砦で身に着けた能力（のうりょく）を封（ふう）じながら生きてきたのだった。

登場人物

名探偵ラト・クリスタル

　実験のためにパーティメンバーを全滅（ぜんめつ）させた後（のち）に追放処分（ついほうしょぶん）を食らった名探偵（めいたんてい）。

　美しいスモーキーグリーンの瞳（ひとみ）に、端正（たんせい）な顔立ちをしているが、性別不明。

　観察力（かんさつりょく）に秀（ひい）でており、初対面（しょたいめん）の人物のプロフィールを見抜くなど探偵らしい能力にすぐれる。

　また、犯人を捕（つか）まえるためならば筆跡（ひっせき）を模倣（もほう）し、ブラフを用（もち）いるなど手段を選ばないことも。

　女装（？）趣味や、違法（いほう）な薬物の吸引（きゅういん）、真夜中に太鼓（たいこ）を叩くなど奇行（きこう）が多くクリフを悩（なや）ませている。

冒険者クリフ・アキシナイト（アンダリュサイト）

　冒険者になるため迷宮街を訪れた平凡（へいぼん）な若者。

　実はアンダリュサイト卿オスヴィンの第四子。イエルクの直系（ちょっけい）の孫。

　日頃はとくに取り柄（え）のない剣の使い手だが、本来の彼は対人戦闘に特化（とっか）しており、超近距離戦からアクロバティックな戦闘（せんとう）まで幅広（はばひろ）くこなす。

　クリフはそれを殺しの技術だとして、いつか封印（ふういん）できることを願っている。

カーネリアン夫人（ふじん）

　グレナ・カーネリアン。

　迷宮街アレキサンドーラを牛耳（ぎゅうじ）る《三人議会（さんにんぎかい）》のうちのひとり。

　ラトとクリフの才能に一目（いちもく）置いている。

　エストレイの事件解決の恩（おん）を返すため、ふたりをほぼ無償（むしょう）でカーネリアン邸（てい）に住まわせている。

エストレイ・カーネリアン

　グレナの息子。故人。

　クラン《銀狐》のリーダー。優秀な冒険者だった。

モーリス

　カーネリアン邸の執事（しつじ）

イエルク・アンダリュサイト

　クリフの祖父（そふ）に当たる人物。

　ハゲワシのイエルク、またはディルタイの悪鬼（あっき）イエルクと呼ばれる。

　聖女殺しの大罪人（たいざいにん）でもある。

　裏切りを得意とする謀将（ぼうしょう）で、犯罪者たちの軍団を率（ひき）いた。

　イエルクの孫として、クリフを厳（きび）しく育て上げる。

　彼の教育は剣術や戦術などの暴力だけではなく、盗みや恐喝（きょうかつ）の技術、毒の知識にも及（およ）んだ。

キルフェ・アンダリュサイト

　ハゲワシのイエルクの第一子、オスヴィンの養女（ようじょ）。

　オスヴィンの後妻（ごさい）が連れてきたクリフの義理（ぎり）の妹。

　兄クリフを自由にするため、聖女選定（せいじょせんてい）の儀式（ぎしき）を受けて聖女となった。

三人のじじい

　チビ・ヒゲ・ノッポの品（ひん）の悪いじじい三人組。

　アンダリュサイト砦（とりで）に住んでいる。

　イエルクの元部下で、イエルクの没後（ぼつご）もクリフを教育した。

ジェイネル・ペリドット（パパ卿）

　ラトの父親にして探偵。侯爵位（こうしゃくい）を持つ。

　ラトを甘やかして育てた。

竜人公爵（りゅうじんこうしゃく）

　北方領主（ほっぽうりょうしゅ）として君臨（くんりん）する強大（きょうだい）な公爵であり、竜人。

　本体は巨大な竜であり、人の姿に化（ば）けて人界（じんかい）に姿を現わす。

　イエルクにうらみがある。

敏腕氏（びんわんし）

　冒険者ギルドの受付係。

　何事にも抜（ぬ）け目（め）のない人物で、しかもものすごく強い。

　受付係なのに、なぜそんなに強いのか、誰も知らない。

ナミル・デマントイド（ナミル氏）

　迷宮街の裏社会（うらしゃかい）の顔役（かおやく）である。

　非常に暴力的で怒（おこ）りっぽく、恐怖によって部下たちをまとめ上げている。

　心は女性である。